イメージが浮かぶ表現で
人を説得する

 人間には、イメージを浮かべる能力がある。直接目にしなくても、イメージを浮かべることによって視覚を刺激される。人を説得する場合、イメージが浮かびやすいように表現すれば、視覚が刺激されて、相手も説得されやすくなる。

 永 六輔の著書『商人』に、こんな話が載っていた。

 佐渡島をドライブすると、面白い交通標識をよく見かける。

 「ワカメ八百円」だけでなく、「美女入浴中」なんて標語があって、楽しい。美女が入浴しているところが見えるわけではないのだが、この看板で確実にスピードが落ちるのである。「美女入浴中」という表現で、人々は入浴している美女の姿をイメージして浮かべる。その瞬間、ほとんど自動的に、クルマのスピードが落ちて、運転する者は周囲を見渡す。

 行ってみたくなるような、ユーモラスな説得の表現である。

 焦りから、力が入りすぎて、本来の実力を発揮できない部下がいた。その彼に、上司が

「力を抜け」

と言って、説得した。力んでしまう相手にこれは無理な注文だ。

 部下に対して、次のように言ってみたらどうか。

 「新幹線で大阪に出張したときね。自動ドアの前に立って一生懸命、ドアを閉めようとしている人を見かけたんだ。ちょっと、自分が脇にどけばドアは閉まるのにね。いまのキミに似ていないかな」

 自動ドアの前から離れるイメージが「力を抜く」に結びついた瞬間、〈そうか!〉と、部下はわかるのである。自分が変われば、相手も変わるのである。

相手がピンとくる
「比喩」を使う

 「比喩」とは、あることを別の何かにたとえて話す手法である。たとえるものとたとえられるものの間に、類似性があり、両者の結びつきが、理屈ぬきでピンとくるのが比喩の特徴である。