必要なのは「取り入れるための技術」
では、どうすれば「読みっぱなし」をやめて、読んだ本のことを頭に残すことができるのでしょうか。読んだ本の内容を、なるべく忘れないように、自分の血や肉としていきたい。本の情報をきちんと体に落として、読書を楽しみながら自分をつくっていきたい。
そのためには、具体的にどうすればいいのか。この連載ではそうした問いに答える方法をご紹介します。
昨今、書店には、たくさんの読書術の本が並んでいます。多読、速読、乱読、併読、遅読……と紹介されている方法論もさまざまです。どれも一理あるとは思います。
しかし、もっとも忘れてはいけない基本的な読書の目標とは、「1冊1冊から、きちんと自分なりに何かを学ぶ」ということではないでしょうか。月に何冊以上読むとか、1冊を何十分で読むとかいったことは、この目標の前ではどうでもいいことです。
さらに、ただ読んで学んだことが何年か残るだけでなく、もっと何十年も頭の中に残って発酵を続け、何かを体験した拍子に思い出して、心が動かされる。またその本を読み返してみたくなる。
このような「本との深い付き合い」ができれば、理想的でしょう。より速く本を読むことを目指してトレーニングしたり、月に何万円も本を買って乱読したり、ロジカルな思考能力を鍛えたり、といったことは、それからでも遅くありません。
それより、自分が今求めていることに応えてくれそうな本を、1冊1冊しっかりと選ぶ。そしてその1冊と真摯に向き合い、本から学ぶ努力を重ねる。この方が賢明ではないでしょうか。
さて、単純に読んだ情報を頭に残したいなら、何度も繰り返し読むとか、声に出して読み上げるという手もあります。短時間でより多くの情報を頭に入れたい場合、一度により多くの文字情報を目から取り入れるというような速読の方法もあります。
けれど、そのようなリーディングの技術はどうしてもハードルが高い。高額な代金を支払ってセミナーに参加しても、実行できている人はごくわずかです。この連載で採り上げる方法は、そうした特別なリーディングの技術とは一線を画しています。
最新の脳科学とかフィジカルなトレーニングとも無縁な、誰にでもできる「普通の方法」です。しかし、この方法なら、今すぐにでも手にした1冊と濃密な関係を築き、確実にリターンを得ることができます。
また、この読書術は、単に読んだ内容を記憶するのとも違います。本から得た知識を「知恵」へと変化させ、自分の手足のように使いこなせるようにするのです。大げさに聞こえるかもしれませんが、やり方は、読書の基本中の基本と言ってもよいものです。それ故に誰でも実践でき、確実に効果が得られるのです。