この会社の取引銀行は7つ。武蔵野銀行の融資額は第3位、シェアは8%にすぎない。通常、企業の経営が悪化した場合には、融資額の大きいメインバンクが中心となって支援策を検討するものだが、今回はシェア54%のメインバンクが支援に慎重な態度だという。そのため、第2位の銀行が主導して、今回の共同融資を持ちかけてきたのだった。

 メインバンクの対応は不透明、業績も悪化している。武蔵野銀行は、追加融資に踏み切れずにいた――。

資金繰りにあえぐ中小企業が急増!<br />「貸すか、貸さないか」地方銀行 苦渋の選択
「メインバンクから裏切られた」と話す部品メーカーの元専務。倒産後、がらんとした工場で後片付けをしていた。

 それから2ヵ月後、部品メーカーは倒産した。取材班は、倒産するまでの2ヵ月間に何があったのか、元専務に話を聞いた。すると元専務は、メインバンクから裏切られたと、悔しそうに話した。

 「何のためらいもなく融資を撤回したフシがある。それが腹立たしい」

 融資が撤回されたのは、手形の支払い期日の3日前だったという。工場は、メインバンクに担保として押さえられている。無担保で融資していた武蔵野銀行は、3500万円の貸し倒れ金を抱えることになった。

銀行と企業のあるべき姿とは?
その原点を問う未曾有の大不況

 数少ない優良企業を奪い合い、激しさを増す銀行間の競争。武蔵野銀行では新規開拓に力を入れるべく、この不況の中、事業拡大・設備投資を積極的に進めている企業にアプローチをしている。しかしそうした優良企業は、すでに他行が取引を進めており、社長や経理担当者に会うのも難しいケースも多い。一方で、多くの企業が資金繰りに行き詰まっている現実もある。

 銀行に求められる期待と責任。百年に一度ともいわれる今回の不況は、銀行と企業の関係を、その原点から問いかけているように感じた。

(文:番組取材班 小口拓朗) 

取材を振り返って
【鎌田靖のキャスター日記】

 百年に一度といわれる不況。資金繰りに苦しむ企業の倒産が相次ぎ、金融機関に対して「貸し渋り、貸しはがし」という批判も上がっています。「本当に貸し渋りはあるのか。そもそも銀行は貸す、貸さないをどうやって判断しているのか」。融資の実態に密着することで今の経済危機の中、銀行や企業のあり方が見えてくるのでは? というのが番組の狙いです。

 とはいえ取材は難航しました。去年の10月から複数の銀行にあたりましたが、取材の許可が得られません。そんな中、私たちの番組の趣旨を理解して、撮影に協力してくれたのが武蔵野銀行でした。

 少しおさらいをしておきます。バブル経済の崩壊後、不良債権処理が銀行の最大のテーマとなります。金融庁は銀行の再生を目指すため融資について厳しい検査を進めてきました。そんな中、日本を襲ったのが今回の金融危機です。金融庁は、今度は「貸せ、貸せ」と銀行に求めます。