解決後働き続ける場合は特に
報復を防ぐべく暴力の確たる証拠を

 職場における暴力と関連して、パワハラという言葉がある。パワハラは法律用語ではないので、企業において懲戒処分をするか否かの場面は格別、法的解決をする場面において、パワハラに該当するか否かという論点建てに意味は無い。

 民事上重要なのは、違法行為か否かである。行為の違法性は、その内容、経緯、程度、結果等を総合考慮されることになる。

 物に対する暴力であっても損害賠償が認められる場合もある。筆者が実際に担当した事案で、密室において上司が机を叩いて社員を罵倒した行為に関して、少額ながら慰謝料が認定された例がある。このケースにおいても、叱責をする一部始終を録音した音声が証拠として重要な役割を果たした。

 企業に対して請求する場合、上司の暴力だけではなく未払残業手当の請求等、他の請求も併せて行うことが早期かつ有利な解決を導く場合もある。上司による部下に対するセクハラの事案ではあるが、証拠上企業の責任は認められ難いケースであったものの、未払残業代を併せて請求したことによって、原告が満足する内容で和解に至った事案もある。

 企業側、上司側、社員側のいずれであれ、早期に有利な解決を図るためには、問題が生じた後の早期の時点、できれば、証拠収集が可能な時点で弁護士に相談されることをお勧めする。

 また、訴訟外で和解をする場合であっても、特に当該企業で仕事を続ける場合には、不利益な処分や上司からの報復を受けぬよう、可能であれば、合意書中に懸念点を解消するための文言を極力盛り込んでおくべきである。そのためには、暴力の事実等に関する強力な証拠を得て、企業や上司に対する交渉力を高めておく必要がある。

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■執筆者プロフィール

曽我 紀厚/そが・のりあつ

東京大学法学部卒業。2002年弁護士登録。弁護士法人TNLAW代表社員。新日本製鐵、森・濱田松本法律事務所、鳥取ひまわり基金法律事務所所長、鳥取県人事委員会委員長を歴任。東京西法律事務所、鳥取総合法律事務所での相談も受ける。会社法一般、交通事故、遺言・相続、労働事件(使用者側及び労働者側)などを取り扱う。中小企業内の主導権争いに実績がある。

弁護士法人TNLAW東京西法律事務所