本連載第8回に引き続き、反社会的勢力との対応について、押さえておきたい法律知識をお届けする。今の反社会的勢力は、いわゆるヤクザ映画に出てくるような風体ではないことが多い。一見すると、エリートビジネスマンにしか見えないという話も聞く。だからこそ、気づかないうちに自分の生活圏内に反社会的勢力が忍び寄っているということも多いのだ。自分が所有するマンションの借り主や、たまたま入居した賃貸マンションのお隣に引っ越してきた人が反社会的勢力だったら、あなたは不安で夜も眠れないだろう。そんなとき、あなたはどのように対処したら良いのだろうか。(弁護士・國安耕太、協力・弁護士ドットコム

普通の企業や人のように
生活に忍び寄る反社会的勢力

「先月、都内にあるワンルームマンションの1室を父から相続しました。この部屋は、父が株式会社A企画という法人に居住用(社宅)として賃貸していたのですが、管理会社から、最近、強面の暴力団員風の男が出入りしていると連絡がありました。このままでは、今後、暴力団事務所として使用されてしまうのではないか、また、暴力団の抗争事件に巻き込まれ近隣トラブルに発展しないか、非常に不安です」

 最近、このようなご相談が増えています。

 平成22年4月1日以降、各県で順次暴力団排除条例が制定・施行されました。平成23年10月1日には東京都と沖縄県で施行され、全国の都道府県すべてで暴力団排除条例が制定・施行されるに至りました。

 これら暴力団排除条例では、暴力団事務所を新たに開設されないようにするための条項が含まれています。

 たとえば、東京都暴力団排除条例では、学校等の周囲200メートルの区域内において、暴力団事務所を開設、運営することを禁止しています(22条)。また、不動産の譲渡または賃貸をする場合、契約書に暴力団事務所としての使用を禁じるという特約および暴力団事務所として使用されていることが判明した場合には、契約の解除等できるという特約を設けることが求められています(19条)。