元社員から見たゴーン改革

田中 ご著書によると、岩田さんは日産に入られて、新入社員として、みんなの前であいさつするとき「私は、将来、日産の社長になります」と宣言されましたよね?

岩田 そうですね。

田中 では、日産が経営危機に陥ったときにルノーが資本を入れて、ゴーンさんがCEOで入ってこられて、見事に経営再建を果たしました。あのとき、ゴーンさんではなく、岩田さんが日産自動車のCEOになっていたら、どんなふうにやったと思いますか? 

岩田 仮定の話しをするのは難しいので、一般論でお話しさせてもらいます。一般的に、極度の経営不振の状態に陥った会社というのは、営業、生産、労使関係といった会社のあらゆるところでおかしなことがまかり通るようになっています。現場の社員は、そんな問題に対して結構深刻に感じているものです。だけど、しがらみやら現状を維持したいといった組織の論理が幅を利かせて、なかなか改めることができなくなります。そうして根本的な問題が先延ばしされるわけです。もっとダイナミックにガンガンやればいいんだけど、それができる勇気のある人がいないんですね。役員含めてみんなサラリーマンばかり。自分の命をかけても会社を復活させるという気持ちを持ったリーダーが決断しないといけません。ゴーンさんは、そういうしがらみがないから、バサッ、バサッと断ち切ったわけです。その結果、組合も協力したし、社内の偏った学閥もなくなったということですね。

田中 ゴーンさんの決断力を含めたリーダーシップに尽きるわけですね。

岩田 経営不振の会社を再建させるためには、経営トップが強い権力を持ってトップダウンでガーッとやらないといけません。ちなみに、外部から見てゴーンさんが来てから最初の1年くらいは、英語を話せる人が偉くなっているなという印象がありましたが、2年目、3年目あたりからは、やはり、ゴーンさんはきちんと人を見て評価しているなぁと感じました。


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