「ドル建て資産」優位時代の終わりの始まり!?欧州のユーロ資産シフトにアジア通貨上昇Photo:PIXTA

トランプ関税ショック、米株式市場は回復だが
欧州やアジア諸国ではドル金融資産離れ

 トランプ大統領が「相互関税」を4月2日に発表して以来、米国市場は米国株・米国債・ドルが同時に下落する「米国トリプル安」に見舞われた。

 その後、朝令暮改のトランプ関税政策に市場は右往左往する展開が続いたが、徐々に米政権の妥協姿勢も見られるようになり、米国資産に対する極度の不信感も後退して、S&P500など主要株価指数は4月2日の水準を取り戻した。

 経済メディアを一時賑わした「米国売り」との悲観論も、ひとまずは後退したように見える。

 だが、米国債とドルという二つの市場には依然として警戒感がくすぶっており、市場心理が原状回復を果たしたとは言い難い。確かに英国との関税合意や中国との禁輸的な関税水準の引き下げなどに見られる通り、トランプ政権にも交渉長期化を回避したい気持ちがちらついているが、日本も含め関税見直し交渉が円滑に進む保証はない。

 逆に鉄鋼関税では、日本製鉄のUSスチール買収もからんで関税率を25%からさらに50%まで引き上げた。

 先月末に米貿易裁判所がトランプ関税の一部を「違憲」としたが、控訴裁判所はその判断を一時差し止めとしており、違憲とされた国際緊急経済権限法適用以外のルート(通商法など)を根拠とすれば、関税発動の続行は可能だ。米国の実効関税率は1930~40年代に接近すると警戒する声は小さくない。

 そしてウォール街が予想するFectSetによれば、S&P500企業の2025年の増益率見通しが9.3%となっているが、その予想も高過ぎる印象が否めない。米国株売りを積極化する機関投資家は少ないとしても、従来のような米国株への傾斜配分の継続には見直しが入っても不思議ではない。

「DeepSeek」の登場で、ハイテク産業における米国の特権的立場も薄れつつある、といった論評も増えてきた。

 一方、海外は、欧州の米ドル建て金融資産市場では2月以降、資金流出超で4月は2年ぶりの高水準となるなど、ドルからユーロ資産へのシフトが始まっている。対米輸出などで蓄えた海外保有資産の大半を米国債投資に向けてきたアジア諸国でも、ドル安がとまらない状況だ。

「米国金融資産優位の時代」は、終わりの始まりを迎えているようにも考えられる。