書籍のタイトルには様々な種類があります。『問題解決入門』といったように、ずばり内容全体を実直に言い表すようなもの。反対に、聞いただけには「?」と思う『たまたま』のような書名もあります。タイトルは、装丁とともに読者に真っ先に届く、書籍の顔と言える重要な役割を持っているため、著者の方も編集者も多くの人の意見を取り入れながら最後の最後まで悩みます。
さて、そんな書名の中には「タイトル自体が長いひとつの文章になっているもの」があり、また「書籍の内容の中でインパクトのあるフレーズを抜き出したもの」もあります。今回紹介するのはその草分けとも言える1冊です。そしてこの本はビジネス書では稀なコンテンツ展開がなされました。

難解な「会計」のしくみと意味を
ストーリー仕立てでわかりやすく

林總著『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』
2006年9月刊行。インパクトを活かした縦置きのタイトルと、皿に載った餃子、両脇にナイフ&フォークという気の利いたイラストで、7年経った今でもまったく古さを感じさせない装丁です。

『餃子屋と高級フレンチでは高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』。2006年9月に刊行された本書は、書名自体が好奇心をそそる問いかけとなっています。もちろん、この問いかけに対する回答は説明されていますが、書籍の内容はカバーにも記載されているとおり「経営に必要な会計センス」が身につく、管理会計全般を知るための入門書です。

 27万部の大ヒットを記録し、その後続編として『美容院と1,000円カットでは、どちらが儲かるか?』『コハダは大トロよりなぜ儲かるのか?』『50円のコスト削減と100円の値上げでは、どちらが儲かるか?』が刊行され、シリーズ累計で42万部という人気シリーズになりました。

 ベストセラーとなった主要因はその構成。亡き父から倒産寸前のアパレル会社を引き継ぐことになった主人公が会計コンサルタントのアドバイスを受けながら会社を立て直していくストーリーを軸に、章末に解説を挟む形となっています。

 会計はビジネスにおける「経営情報」そのものですから、経営と一体で学ぶことが大切です。そこで、本書は経営の素人である主人公の由紀が、会計のプロである安曇教授の助けを得て、会計と経営を学んでいく、という物語形式をとりました。(3ページ)