三笠は番組をつくる経験はそれなりに踏んでいるが、こういう姑息ないじめへの対処法を知らない。困り果てたのは、この番組制作会社の「しきたり」を知らないこと。

 たとえば、一緒に取材に行くカメラマンを手配するときも、会社特有の方法があるのだが、内田は教えない。三笠が他のディレクターに聞くと、内田のいるところでは答えない。

 結局、その「しきたり」を守ることなくカメラマンを手配すると、内田が騒ぐ。そして、部長にわざわざ「三笠がこんなことをしている」と報告をする。

周囲から煙たがられ
「キモイ変人」のような扱いを

 そのうち三笠は、自分を責めるようになった。「この会社に合わないのではないか」「自分が内田を怒らせる言動を取っていたのではないか」と考え込む。

 部長らはいつしか、意気消沈する三笠から「距離」を取るようになった。部長はもともとは出向組。部下たちの争いに巻き込まれ、それを親会社などに知られたくないと思ったのだろうか、三笠とは挨拶をするくらいになった。わずか数ヵ月前まで、「今度入ってくる男は、この部署のエースになるディレクターだ」と称えていたにもかかわらず……。

 三笠は今、「僕は周囲から煙たがられ、キモイ変人のような扱いをされている」と嘆く。“エースになるディレクター”から、番長からいびり出される身になり、ついには“キモイ変人”になってしまったのである。

「あの職場にいると、話し合う相手もいない。いつも1人。だから委縮する。言いたいことはあるけど、言えない」

 三笠は、実は制作プロダクションにいる頃も、40代のディレクターらからいじめられた。特に1人の男性は、執拗に彼をいびった。