農地法の「転用規制」も曖昧な運用

 農地法の「転用規制」もあるが、真剣に運用されなかった。

 特に、平坦で区画が整理されている平場の優良農地こそ宅地等に転用されやすい。1954年に農地の転用許可基準を農林省は定めた。農地を第一種、第二種、第三種に区分し、優良農地である第一種農地は原則不許可、市街化区域などの第三種農地は許可、第二種農地はその中間でケースバイケースで許可するものとした。

 しかし、あらかじめ農地を一種~三種に区分しているものではなく、個別の転用申請が出てからどれに該当するのかを個別に判断している。また、かつては第一種農地であっても、近くに農地転用により病院や道路などができれば第三種農地に転換されてしまう。転用が転用を呼ぶのである。このように転用許可には裁量の余地が大きい。

 減反政策が実施されて以降は、米が余っているのになぜ転用させないのかという政治的圧力が高まった。食料安全保障の観点からは、現在の農地面積だけでは日本の人口を養えない。水田が余っているのではない。高米価のために米が余っているだけなのである。

 前述したように転用許可には裁量の余地が大きい。それを判断する農業委員会は主として農業者により構成されているため、いずれ自分も転用するのだと思うと、身内の転用申請に甘い判断を下しがちである。加えて、農地法に違反して転用された案件でもほとんどの場合、事後的に転用許可が下されてきた。また、将来の転用を見込んで、農家が開発業者等と農地の売買契約を結び、開発業者等の名義で仮登記を行うケースも出ている。

 我が国で規模が拡大しないのは、二つの原因がある。第一に、ゾーニング規制が甘いので、簡単に農地を宅地に転用できる。農地を貸していると、売ってくれと言う人が出てきたときに、すぐには返してもらえない。それなら耕作放棄しても農地を手元に持っていた方が得になる。耕作放棄しても固定資産税はほとんどかからない。