高齢化の進行、なかなか改善しない雇用状況、税収の減少――。地方都市の多くが、深刻かつ構造的な問題を抱えている。
釧路市もまた、そのような地方都市の1つだが、生活保護制度も活用した独自のプログラムのもと、地域全体を活性化するための活動を推進し続けている。
「生活保護制度は地域の希望、受給者は地域の宝」とする釧路市の取り組みは、どのようなものなのだろうか?また、改正生活保護法下で、その取り組みは今後どうなるだろうか?
困窮者支援の基本は
「何をしてあげられるのか」
「釧路市の自立支援の取り組みは、いろいろな方面から評価されています。他の自治体などの視察、2013年は80件ありました。国からも評価していただいています。『困窮者の自立支援という難しい課題に取り組み、成果を上げてきた』ということで。でも、そんなに難しいんでしょうか? 難しいと考えること自体が、ちょっと違うんじゃないかと思うんですよね」
釧路市生活福祉事務所主幹・佐藤茂さん(59歳)は、そう語りながら、ちょっと首を傾げる。
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「役所はしばしば『タテ割り』と批判されますけど、たとえば納税課に『税金を払えないんです、待ってください』という市民が来た時、『生活保護を受けてはどうですか?』という職員も、中にはいます。でも、言った本人が、生活保護の仕組みをよく知っているわけではないんです。そういうタテ割り行政の仕組みは、変えていかなきゃいけません。つまり、連携することが大切なんですよね」(佐藤さん)
役所の窓口では、生活に困窮した人々をまず受け止めて、助ける必要があれば助ける。その原則がはっきりしていないから、さまざまな問題が起こる。それが、佐藤さんや櫛部武俊さん(前・生活福祉事務所主幹、本連載第46回参照)の感覚だ。
でも、釧路市も最初から、生活に困窮した人々を「まず受け止める」という考え方を持っていたわけではない。
「昔の役所はどこでもそうだったと思うんですが、福祉事務所や保護課は別枠という感じでした。『そこへ行くのは悪いことですよ』みたいな。あまりプラスイメージはなくて、『何かあったからじゃないの?』というような。よく言われる『NHK職場』、納税、保護、国保。市民とお金の絡む場面で向き合う部署は、みんな行きたくない職場のベスト3でしたね」
そういう、どちらかといえばネガティブなイメージの強かった生活福祉事務所は、今、釧路市役所の中で最も注目されていると言っても過言でもない。その注目されている生活困窮者支援のエッセンスは、何なのだろうか?
「簡単です。『その人に何をしてあげられるのか』ということに立ち返ればいいだけです。そんなに難しいことではありません」