2013年11月13日、参院先議となっていた生活保護法改正案は、数多くの附帯決議とともに参院本会議を通過した。引き続き衆院で審議される予定となっている。
今回は、元福祉事務所ケースワーカーから見た生活保護法改正案の問題点を中心にレポートする。厚労省が繰り返し主張し、附帯決議にも盛り込まれた「運用は変わらない」の実現可能性は、どの程度なのだろうか?
衆議院での審議
未だ開始されず
先週の2013年11月13日、参院で可決された生活保護法改正案は、参院先議とされていたため、引き続き衆院に送付された。先週の時点では、今週中にも審議と採決が行われて成立する可能性が高いと見られていたが、本稿執筆中の2013年11月20日現在、審議は開始されておらず、もちろん採決も行われておらず、生活保護法に関する衆院での審議のスケジュールが決定されたという情報も流れていない。
というのは現在、衆院・厚生労働委員会において、田村憲久厚労相が追及の対象となっているからである。7月の参院選後、徳田毅衆院議員と徳洲会グループの選挙法違反の可能性が問題となり、すでに数名の逮捕者も出ている。田村厚労相は、徳洲会グループの幹部から接待を受けた可能性・選挙に関する何らかの依頼を行った可能性を指摘されているのだ。国民の生命に関わる厚労行政のトップにふさわしい人物であるかどうかも含めて、徹底した事実関係の究明が行われることを筆者は望む。
今回は予定を変更し、元ケースワーカーへのインタビューを通じ、衆院に審議の場を移した生活保護法改正案に関する
「生活保護の運用は変えない」
という厚労相答弁に、どの程度、現実化する可能性があるかを検証する。
急遽、インタビューに応じていただいたのは、田川英信さん(58歳)。東京都内の福祉事務所で、ケースワーカーとして10年間勤務した。その後、保護係長(査察指導員)として5年間、現場のケースワーカーの指導に携わった経験もある。
生活保護の申請権は
担保されなくなる可能性も
――今日はお忙しいところ、ありがとうございます。11月13日、生活保護法改正案が参院で可決されてしまいました。衆院で可決されて成立してしまった場合、最も懸念されるのは、「事実上、申請が不可能になってしまうのでは」という点ではないでしょうか。
「そうなんです。生活保護法改正案では、申請者の困窮状態を証明する書類の添付が必須とされていますよね。法文がそうなっている以上、窓口の職員が文字通りに解釈してしまう可能性は高いです」