60年前の出来事なのに、
今も新鮮に読めるのはなぜ?

 多くのサクセスストーリーがこの本では紹介されているが、なにもレターマン本人の話だけにとどまらない。レターマンの友人(実に有名人ばかりだが)のエピソードも多く記載されているのだ。

 前述した人物のほかに、金融王J・P・モルガン、ヒルトンホテルの経営者コンラッド・ヒルトン、ベーブ・ルースとHR数を競ったハンク・グリーンバーグなど、各界の著名人が多数登場。

 また、ワーナーブラザーズが映画「ヨーク軍曹」で大成功した話、(当時の)新製品「ダンヒル」(タバコ)の展開秘話のほかに、ユニリーバの前身・リーバブラザーズや3Mの前身・ミネソタ鉱山会社など有名企業の話も多数記載。いずれも、営業術を学べるエピソードだからこそ読み応えがあり、60年以上経った今も存在している企業であることから、勝ち組に学べるストーリーで満ち溢れている。

あなたの手帳に書き写してもらいたい、
毎日、声を出して読みたい言葉がある

 著者のレターマンは、実にいい言葉を残している。本の中では、スローガンと称し、また、彼の名をもじって、レターグラム(leter-glam:Letermanとepiglamの造語のよう)と書かれている。それらの言葉は独り歩きし、レターマンの知らぬところで、ところどころ使われていたのだ。

 ある日、私はシカゴのミルウォーキー街のウォルク・アンド・コットラー百貨店へ、日用品を求めに入ったことがあった。買い物の後で、ふと勘定にまちがいはないかと伝票を見たところ、下の欄に見なれたスローガンがあるのに気づいた。そこには、「ちょっとしたまちがいでも、あなたがそれを訂正しないと大きなまちがいの元となる―エルマー・G・レターマン」と印刷してあった。(47Pより抜粋)

 ほかにも、「失敗の理由をあげればたくさんあるだろう。だが、いいわけとなるものは一つもない」(92Pより抜粋)「報酬として受けた額だけしか働かない人は、その人の働きだけの報酬しか受けられない」(102Pより抜粋)など、営業の教訓となる話とともに、紹介されている。