そこで中国事業の戦略を大きく見直し、中国の日用品・化粧品大手、上海家化聯合(上海市)と組み、同社の販売網を本格的に活用して販路を広げた。品ぞろえも紙おむつ、洗濯用洗剤、生理用品に投資を集中し、日本流の最新技術を使った高級品にとどまらず、中間層向けの商品も増やすという作戦で、売り上げを伸ばし、15年12月期から黒字化となる計画がようやく立てられた、という。

 この報道だけではなく、中国のメディアや関係者の証言でも、販売ルートをもつ上海家化の協力を得ているから、花王の中国事業がようやく黒字の軌道に乗ったということが証明されている。日本経済新聞のこの件に関する報道のタイトルも、「花王の中国事業、15年12月期に黒字化 現地大手販売網活用」となっている。つまり現地大手販売網活用が同社のアジア事業を黒字化したという事実を強調している。しかも、この強調は現地の実情にもあっている。

「渠道為王」が持つ意味

 中国には「渠道為王」という言い方がある。ここでは、販売ネットワーク、販売ルートを持つ方が強いという意だ。

 2011年の時点で、花王の商品は中国では90都市しかカバーしていなかった。1998年から販売実績が下がりっぱなしになり、2004年からついに赤字に陥ってしまった花王はそれ以上の都市をカバーする経済力もなかった。中国のメディアの報道によれば、2010年P&Gの中国での売上額が約260億元(約3250億円)になったとき、花王中国の売上額は約24億元(300億円)でしかなかった、という。

 しかし、2012年から1000都市レベルの市場に販売代理店をもつ上海家化と組んだため、花王がその時点から今後3~5年の時間で、650の都市(うち地級市280、県級市370)の市場に浸透するという夢を見ることができるようになった。そして今になって黒字経営という航路も見えてきたのだ。まさに「渠道為王」、つまり中国で販売ネットワークを手に入れることの重要性を改めて認識させられた新事例である。