中国ハルビン市が幼稚園児11人の観光を「超VIP待遇」でもてなしたら驚きの展開にハルビン市、2012年撮影 Photo:Eric Hevesy/gettyimages

中国の東北地方に「投資すべきでない」と思われてきた

 唐時代の詩人・王之渙が残した名句に、「春光不度玉門関」というのがある。「春の光はこの玉門関の外までは届かない」という意味で、万里の長城の関門の一つで西部のシルクロードにある玉門関が、いかに寂しくて遠いところにあるのかを強調する詩句だった。

 その名句をもじって、かなり前から「投資不過山海関(山海関以遠の投資は避けるべきだ)」というセンテンスが作られ、ここ20年ぐらい投資環境から見た中国の東北地方の立ち遅れを痛烈に揶揄する表現となった。山海関とは、長城の最東端に設けられ、中国本土と東北地方(かつての満州)をつなぐ出入り口となっている。

 この名句を目にすると、思い起こされることがある。

 上海万博が開催された2010年に、拙著『莫邦富が案内する中国最新市場 22の地方都市』が出版された。中国を東部(沿海部とも言われる。上海市、江蘇省、浙江省など)、中部(河南省、湖北省、湖南省など)、西部(四川省、陝西省、雲南省、広西チワン族自治区、新疆ウイグル自治区など)、東北部(遼寧省、吉林省、黒竜江省)という4つの大きなブロックに分けて、それぞれのブロックの将来性のある地方都市を、中国進出に興味を持つ日本企業の方々に紹介した。しかし、同書は東北部ブロックの都市を一つも推薦していなかった。

 日本のある大手家電量販店が東北の瀋陽市と華北の天津に進出するとき、私のところにアドバイスを求めに来た。この時、私は東北への進出に対しては特に慎重に考えるべきだと反対の意見を述べた。そのいずれの進出もそんなに時間がたたずに失敗して、撤退してしまった。私もこの経験で「投資不過山海関」はやはり鉄則だと再認識した。

 東北はこうして経済発展に取り残された地域と見られ、東北出身者の地元脱出は社会現象になり、東北地域は人口激減地域にも成り下がった。中国政府は1990年代から東北の再振興を再三呼び掛けてきたが、こうした努力はまったくと言ってもいいほど、効果が表れてこなかった。

 東北に絶望し、どんなに支援しても、まったく努力してくれないから、もう無理だというあきらめムードが中国全土に広がって完全に定着した。