鶴岡工場のソニーへの売却が実現し、業績も好転しつつあるルネサスエレクトロニクス。だが、内実はリストラ効果が中心。産業革新機構などからの出資を活用し、成長への軌道に乗せられるか。
経営再建中の半導体大手、ルネサスエレクトロニクスの鶴岡工場(山形県鶴岡市)の買収を、ソニーがついに決断した。
昨年12月以降の交渉の焦点は、約600台の半導体製造装置のうち何台をルネサスの別工場に移管するかだったが、約200台の移設でまとまったもようだ。閉鎖予定の工場に買い手がついたことで約75億円の売却金が手に入るほか、工場の約680人の従業員の約8割もソニーに引き継がれる。
また一歩、構造改革が進んだ──。こう安堵するルネサス幹部の間でひそかな目標となっているのが「枕詞を変えよう」である。
枕詞とは「経営再建中」の5文字のこと。経営危機が表面化して以降、従業員削減や官民ファンドの産業革新機構などからの出資といったニュースが報じられるたび、会社名の前に冠されてきた。
不名誉な状況を変えるチャンスと期待を寄せるのが、2月6日発表の2013年度第3四半期決算である。同社発足の10年4月以降、四半期で一度も実現できなかった最終損益の黒字化を、初めて達成する見通しだからだ(図(1))。
営業黒字は160億円の予想で、早期退職金支払いなどの特別損失計上も一段落。加えて、一度は売却を断念し清算を決めたモバイル事業が米ブロードコムに売却できたことで、売却益145億円が特別利益に加わる見込みだ。
これまでの累積の最終赤字が3580億円に上っているとはいえ、最終損益の240億円黒字化という“悲願”達成が近づきつつあることもあってか、一部メディアでは枕詞をはずした報道も出始めた。