問題は仕事の生産性と賃金のバランスだろう。筆者の考えは、ファーストキャリアの時期の賃金・待遇は、家族形成もあるため、多少年功的配慮がきいたものでもよいと思う。しかし、定年を境としたセカンドキャリアの再雇用段階では、その年功の高みを一旦リセットして、社外でのその仕事の相場観を参考にした賃金・待遇としてよいだろう。

 実際には、派遣や請負など外の市場相場も参考にし、これに本人の経験や専門性、自社の期待を考慮したプレミアムをつけた給与・待遇にする。さらに職種・役割・仕事の困難度によってもっと給与ランクに差をつけるべきで、「人についた値段を、職種や役割につける」ことをもっと徹底すべきだろう。ファーストキャリアで頑張っている人たちから、あんな仕事で結構いい給与もらっている、などと言わせてはいけない。

仕事は2倍、給与は3分の1!?
会社とシニア社員、上手な折り合いのつけ方

 筆者は、シニア活用における企業・個人双方のタテマエ、ベキ論先行の考え方について、常々、もっと現実的な足元の議論を行う方が有益だと思っている。シニアの再雇用が本格化する時期を見据え、シニア仕事の実需を探り出し、シニア人材の活用用途を開発し、その仕事の価値に合った賃金・待遇を設定することが必要だと思う。では、企業・シニア社員個人の上手な折り合いのつけ方について述べておこう。

 まずは、再雇用時における企業側のシニア活用のスタンスから触れておこう。

 定年前の50代シニアに、自律・専門形成・市場価値向上を促すチャレンジ型研修を行っている企業は多い。一見、正論なので、参加者も表面的にはそのロジックに従うが、キャリアの下降期に直面しているシニアの心情を踏まえた組み立てにしなければよい効果は生まれない。もはや将来のために頑張れではなく、残り期間数年を日々の仕事満足のために頑張るにはどうしたらよいか、を考えることだろう。

 残された期間での時限的・限定的な貢献や活躍期待に、自分はどう応えたらよいのかを考えるものでなければ、ほとんどお題目だけの研修になってしまう。

 必要なことは、多くの役定・定年を迎えたシニアに対し、この先、与えられる実際の仕事はどのようなもので、どんな給与や待遇が与えられ、そこではどんな働きや期待が求められるかを、キチンと伝えることだ。

 研修などで、10人に1人にあてはまる高い専門性や抽象的な市場価値の向上を訴えても、あまり役には立たない。そんな仕事や職種に当てはまる方は少数者であり、社内では専門性の高い職務ポストほど大概、充足しているからだ。

 人事の実務サイドとしては、対象者のボリュームゾーンを常に意識する必要がある。職群別・年齢別に該当人数をみて、この先にあてがえる仕事で何人くらいの雇用が賄えるのか。まず、仕事と役割、そして賃金や待遇がどの程度になるかなど、シニア雇用の現実を3年から5年間くらいシミュレートすることだ。