2013年4月、プラント・エンジニアリングの世界で、“事件”が起きた。過去に実績がなかった総合重機メーカーのIHIが、米国で初めて新規LNG(液化天然ガス)プラントの建設を受注したのだ。LNGは、中核装置(液化設備)の技術的難易度が高いことから、世界でも扱える企業が限られている。業界内では、初受注から1年近くたった現在でも「できるはずがない」という陰口が絶えない。17年までプロジェクトを率いる米国法人の古見嘉夫会長を直撃した。
――日本では、2011年春に起きた東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所における大事故を契機にして、社会的に「エネルギー問題」への関心が高まっています。最近は、原発問題以外にも、米国で沸き立つシェールガス関連の話題を多く目にするようになりました。
Photo by Shinichi Yokoyama
これまでIHIは、国内外でLPG(液化石油ガス)や、LNG(液化天然ガス)などのエネルギー関連施設の設計に従事してきましたが、ちょうど08年くらいから“大きな変化”が起こりました。
米国は、その頃まで、日本と同じくらいのLNGを必要とする“輸入国”だったのですが、原油価格の高止まりによって国内でシェールガスなどの非在来型資源の開発が進んだことから、“輸出国”に変わっていったのです。その流れに伴って、私たちのビジネスも変化しました。それまでは、産油国・産ガス国からLNGを米国に輸入するための「受入基地」のエンジニアリングが仕事の中心でしたが、08年以降は米国産のLNGを外国に輸出するための「輸出基地」が必要になってきました。わずか1~2年で、生産設備計画の規模がスケールアップされるなど、ビジネスを取り巻く環境が一変したのです。
1981年にIHIに入社して以来、私はずっとエネルギー関連施設のエンジニアリングに関わってきました。昔から、非在来型資源、すなわち採算性の問題により開発が進められていなかったエネルギー源の存在は知られていましたが、ほんの数年前まで純然たる輸入国だった米国で、現在のようにシェールガスがブレイクしていきなり輸出国になるとは夢にも思っていませんでした(笑)。