米国で沸騰中のシェールガス・ブームにより、南米に拠点を置くことの戦略的な重要性が増してきた
写真提供:アトランチコスル造船所
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 6月27日の午後7時半、東京・青山の瀟洒なレストランで、日本の造船業の将来を占う調印式がひっそりと開かれていた。集まったのは、日本とブラジルの船舶・海洋業界を結ぶ立役者ばかりだった。

 日本からは、IHIの釡和明会長と斎藤保社長、ジャパンマリンユナイテッドの蔵原成実会長と三島愼次郎社長、日揮の重久吉弘グループ代表と竹内敬介会長ほか。

 片やブラジルは、国営石油会社ペトロブラスのヘジカルド・ゼネラルマネジャー、ゼネコン2位カマルゴ・コヘア社のハラック会長、同4位のケイロス・ガルボン社のリカルド社長。このほかブラジル最大級のアトランチコスル造船所のディシュマルク取締役、マルコス駐日ブラジル大使などそうそうたる面々が顔をそろえた。

 それに先立つ6月12日、IHIは、専業エンジニアリング会社の日揮と、IHIの持分法適用会社のジャパンマリンユナイテッドと共同で、アトランチコスル造船所への出資を目的としたJEI社の設立を発表した。日本の3社が約25%を出資するJEI社は、結果としてIHIの連結子会社となり、アトランチコスル造船所はIHIの持分法適用会社となる。

日揮は海洋構造物の経験を期待

 IHIの長年のライバルである川崎重工業は、2012年の春にブラジルの造船所への出資に踏み切ったが、まだ建設中であり、完工までには14年いっぱいかかる。

 一方で、IHIなどが出資したアトランチコスル造船所は、現在ブラジルで稼働中の唯一の造船所で、ペトロブラスから22隻の大型タンカーと7隻のドリルシップ(資源探索で使う掘削船)を受注するなど、実際には先行している。