写真提供:東洋エンジニアリング
2011年末に駐留米軍が撤退して以来、イラクではイスラム教スンニ派(武装組織)とシーア派(現政権)の宗教対立が激化しており、なかなかテロ活動が沈静化しない。14年4月末までに総選挙の実施を目指すヌーリー・マリキ首相は、今も米国を行脚して窮状を訴えるなど治安の回復に必死である。
そのイラクで、過去にはどこの外国企業も得られなかった高いプレゼンスを獲得した日本企業がある。海外で、石油・天然ガスなどのプラント建設を請け負う東洋エンジニアリングだ。日揮、千代田化工建設に続く3番手である。
「業者」から「知恵袋」へ
現在、東洋エンジニアリングは、エネルギー問題を管掌するイラク副首相府に直結する"技術アドバイザー"という最上位の立場で、イラクの石油・天然ガス開発の全体計画の策定に深く関与している。
元石油相であるフセイン・アル・シャハリスターニ副首相が率いる副首相府の傘下には、エネルギーに関係する石油省、電力省、鉱工業省、農業省、環境省などがある。その下に、イラク国営石油会社があり、さらにその下には北部・南部・中部・国境地区などで分割した地域別の石油・ガス会社が横並びでぶら下がっている。東洋エンジニアリングは、12年10月にイラク政府から"パートナー企業"と認定されたことから、にわかに自社を取り巻く状況が一変した。
それまでは、世界中のエンジニアリング会社とガチンコで価格競争しながらEPC(設計、資機材の調達、建設工事)事業を受注する「出入りの業者」という扱いだった。それが、いきなり「国家の知恵袋」として厚遇されるようになり、競争入札もなくなった。しかも、東洋エンジニアリングの資源開発担当の幹部が、「イラク・エネルギー委員会」(INEA)という計20人の小組織に唯一の外国人として加わり、各種の会議に顔を出しているのである。