イエレンFRB(米連邦制度準備理事会)議長の登場と共に金融の量的緩和縮小が米国で鮮明になった。真っ先に反応したのが新興国経済。マネー逆流を恐れ通貨が売られ、世界の株式市場に衝撃が走った。
リーマンショック後を支えた新興国ブームが終わろうとしている。ドルを世界に送り出すFRBの政策が反転すれば、じゃぶじゃぶな金融による「覚せい剤効果」は減衰する。世界経済は「空気が抜けた風船」になりかねない。注目されるのが日本、黒田緩和によるFRBの肩代わりである。米国が「出口」を探れるようになったのは「お後の用意」が整ったからだ。日銀は、より大きな責任とリスクを背負い込むことになる。
新興国は「仕手銘柄」
マネーに国境は無くなった。国ごとに規制や統制はあっても、カネはあの手この手で儲かるところに集まる。そしてカネは臆病だ。損を恐れ、危険を察知すると逃げ出す。インド、ブラジル、トルコ、インドネシア、南アフリカ、アルゼンチン、ウクライナ……。これらの国は成長が期待され、投資利回りを稼げる国としてもてはやされた新興国だ。ところが米国の緩和縮小におびえた投資家が通貨が売り、逃げ出そうとしている。慌てた新興国の通貨当局は金利を引き上げて防戦するが不安は解消されない。
これらの国に共通する経済構造がある。経常収支の赤字、対外債務の膨張、外貨準備の不足である。成長が期待され先進国から資金が流れ込んだ。流入を維持するため通貨を高めに維持した。金利も高くした。輸出競争力は落ちる。貿易(輸出)は伸びず経常収支は赤字に。赤字で足らないカネを外国から呼び込み対外債務が膨張する。通貨安になる。無理な水準で為替を維持しようと、外貨を売り自国通貨を買う。結果、外貨準備が減る。そんな悪循環だった。
投資ファンドにとって絶好のカモだった。見かけの成長が進んでいる時は投資利回りを稼ぐ。新興国ファンドなどと称する金融商品を先進国の客に売りまくった。だが長続きしないことは分かっている。密かに通貨の売りポジションを用意し、下落局面でまた儲ける。
規模が小さい新興国市場は株式でいう「仕手銘柄」だ。相場が激しく変動するから儲けやすい。情報を先につかんだものが儲ける。世界にネットワークを持ち、新興国の政治家や官僚機構に情報源を持つ米国金融マフィアの独壇場である。