「65歳までのあと10年持つかな…」
現実感のないシニアに“上手な下山”を

 シニアの戦力化を考えるとき、企業の取り組みとして大切なことは、前述のようなスキル面での対策を講じるとともに、働き続けるマインドをいかに形成するかということだ。成果は能力×行動力×意欲という関係にある。生産性維持や戦力化が、個人の働く意欲とつながっていなければ、どんな施策もよい効果を生まない。

「皆さん、本当のところ何歳くらいまで働きたいですか?」

 筆者が関わっている役定者向け研修の場で必ず聞くのが、冒頭の質問だ。出てくる回答はそれほど明快なものはなく、半疑問が多い。

*65歳くらいまでとは思うが、社内に仕事はあるのかな?自分に合う仕事ならいいけど。

*この先、一体何をやらせてもらえるのかな?自分にできることってあるのかな?

*65歳まではといって、体力・気力があと10年も持つかな…。最近無理が効かなくなってきたしな。

*転勤も多かったし、単身赴任も長かった。60歳で定年になったら、もう田舎に帰りたいな。

*現場仕事で、若い人と一緒にやっていけるのかな?正直、気苦労の多い仕事はやりたくないな。

*いやぁ~もう定年後は、少しノンビリしたいですよ。疲れますよ、この会社は…。

*両親も80歳超えていつか介護が必要になるだろうし、自分の健康・体力も含めて(働くことには)いつ終わりがくるかわからないな…。

 研修では、会社が期待する65歳までの働き方や70歳現役の人生設計を話すが、参加者は間近の役定とその後の処遇、退職金計算の方に関心がいく。肝心の働き方の方は、60歳定年まではなんとか見えるが、それ以上の先のことは大半の方が、よくわからない、というのが実感だ。企業は65歳までの戦力化をあれこれ腐心するが、当のシニアは、それほどの現実感をもって役定・定年後を考えているわけではない。

 そのような50代シニアに何を伝えておくことが有効かを紹介しておこう。

◇登り方はわかるが下り方はわからない=“上手な下山”を教える大切さ

 まず、第一は、“上手な下山”の仕方を教えることだろう。下山という言葉の響きにはやや違和感を覚えるかもしれないが、20年・30年かけて獲得した現在の管理者の地位やポジションの高みから降りることは事実である。なんの準備もなくその落差を飛び降りて、翌日から現場のプレーヤーになることは無理があるし、これでは、使える経験や能力も無駄になる。