抗インフルエンザウイルス作用のある新しい化合物の発見として発表された10余年前は、中堅規模の富山化学にとって勝負を懸けた“期待の新薬”だった。結局、夢は破れたが、それでもアビガンは生き残った。通常であれば「けちのついたクスリは開発中止になる運命」(大手製薬開発担当者)にあるが、多くの条件付きとはいえ承認されたのは、既存薬とは作用メカニズムが大きく異なっていたからである。

 タミフルなど既存薬は、ウイルスを細胞内に閉じ込めて増殖を防ぐ。対してアビガンは、感染した細胞内で、ウイルスの遺伝子複製を阻害して増殖を防ぐ。

 作用メカニズムが異なれば、既存薬に耐性を持ったウイルスに対しても十分な効果を発揮すると考えられている。安全性に多少の不安があっても、「作用メカニズムの新規性に期待し、非常事態への備えとして生き残った」(厚労省関係者)のである。

 富山化学は米国で臨床試験を進めており通常の季節性インフルエンザ薬として承認を目指しているが、米国当局の審査のハードルは日本以上に厳しい。医療的には「最後の頼みの綱」として残ったものの、経営を支える綱としてはほぼ絶望的だ。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 山本猛嗣)

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