それだけに、現在の書籍の編集部では、リーダーとして要領を得ていない。部下への指示が滅茶苦茶になる。部下の編集者6~7人の中には、副編集長よりも経験を積んだ者が数人いるから、指示のおかしさにはすでに皆気づいている。しかし本人は、現場を混乱させても、そのことすら理解ができていない。キャリアが浅く、「混乱」や「正常な姿」に区別がついていないからだ。(⑤)。

 さらには、「書籍編集部に3~4年いた」とはいっても、他の出版社で1年に数冊のペースで担当したに過ぎない。通常、業界の平均では1人の書籍編集者は、年間で十数冊は担当する。年間数冊は、明らかに平均よりも低い。

 前職は、数十万部のべストセラーをよく出すことで知られる出版社の、関連会社だった。表向きは、その会社を「円満退職した」としている。だが実際は、他の編集者と比べると仕事のレベルが低く、上層部などからの信用を得ることができずに、居場所をなくして転職した可能性が高い。

中身はともかく容姿は人目を引く
実力がないのに転職試験を突破

 しかし彼女は、「面接の達人」と茶化される。筆者がフロアなどで数回見た限りでは、目鼻立ちがはっきりとしていて、中身はともかく容姿はきれいだった。そのこともあったためか、「するすると面接試験を突破し、今の会社に入った」と揶揄されている。

 さしたる実績はないはずなのだが、上司やその上の局長(執行役員)からのウケはいい。ただし要領だけで、現在のポジションを掴んだのではない。ある程度のレベルまでは、部内の仕事を一通り心得てはいる。

 要は、人材難なのだ。副編集長は、書籍の編集のレベルは同世代の編集者と比べると相当低い。だが、この出版社はその分野で人材がそろっていない。書籍の編集は、ある意味で「新規事業」であり、社内にノウハウがあまりない。だからこそ、その程度のスキルにもかかわらず、転職試験を経てこの会社に入社してから、わずか半年で副編集長になれた。(⑥)