このまま決めて
いいのかな・・・

「志望企業も、昨年の初めは『エンタメ系』とか言っていたんだから(笑)」

「たしかに会社選びの基準も、『身近な会社』から、リクルーターと『みっちり話せる会社』、それ後『地元で働ける会社』と裕美の中で変化があったね」

「ただ今でも、『このまま決めていいのかな』と思うことがあるの」

「この前も『自分で決めているのかなぁ』って言ってたね。裕美は色々迷うほうね」

「若い時は、自分で決めたと思っても、年を経るとそうでなかったことが分かってくる」

「お父さんもおじさんになった訳ね」

「地元で働ける、結婚しても出産しても仕事が続けられそうだ、という意味では、お母さんの希望通りになった」

「私が話していたことが影響したのかしら」

「おばあちゃんの手術、入院があったからだよ」

「本当にそれだけかな?」

 娘は内々定が決まりほっとした反面、自分で決断する限界も感じたようだ。前にも述べたように、人生の大きなイベントである就職や結婚でさえ、自分ではどうにもならない事柄に支配されている。

 また自分で選択しても、よい結果になるかどうかは分からない。たとえ志望した会社に入っても、仕事の内容に思い違いがあるかもしれない、希望の部署にいけるとは限らない(そのほうが可能性は高い)、困った上司に仕えることになるかもしれない。

まずは与えられた場で
どのように働くか

 それではどうすればよいのか――。

 自分の選択や決断の結果を、前向きに受け取る姿勢が大事ではないか。まずは与えられた場で、どのように働くかがポイントだろう。それは、就職ランキングのような外的な評価は関係なくて、あくまでその人の姿勢に起因する。

 いつも自分のレベルを高めようと努力して、周りの人への協力を惜しまず、笑顔で仕事に取り組む人には、自然と道は開かれていくものだ。

 そういう意味では、この連載の第1回で述べたように、一般的な「いい会社」はなくて、仕事に対する自分の姿勢が大事だろう。志望する会社に内定が決まった人も、そうでない人も同じスタートラインに立っているのだ。

 また第1回の最後に「就職活動を通じて、人と出会い、考え、自分を振り返ることで、後の人生を充実する1つの糧にできるのではないか。親としてはそう願っている。また、娘の就職活動に関わることで、30年近く組織で働いてきた私自身の振り返りにもなる」と書いた。半年前の期待はある程度実現することができたのではないかと喜んでいる。

 また最終的に、娘が地元のC社に決めたのは、会話を通じて父母の思いを汲み取った結果であろう。私は会社選びではあくまで中立のスタンスをとったが、父親としては、妻と同じく娘に身近なところで働いてもらいたかった。彼女はそういう家族の気持ちを徐々に受け入れていったと私には思える。

 次回は、最終回として娘に直接登場してもらう予定である。


<次回に続く>