武力で国境を変えようとする試み
国際秩序に致命的な影響を与える

 クリミアの住民投票で90%を超える圧倒的多数の人々がロシアへの編入を支持し、クリミアは一方的に独立を宣言して、ロシアへの編入手続きに入るという。プーチン大統領は18日夜クレムリンで演説し、クリミアのロシアへの編入を表明した。

 原稿執筆時点ではロシアがクリミアの編入をどのような段取りで進めていくのか、ロシア人の多いウクライナ東部地域にどういう態度をとるのか不透明であるが、いずれにせよクリミア問題を巡る今後の推移は、世界にとって重大な意味を持つ。

 遠く離れたウクライナの問題は、日本とはあまり関係がないという捉え方は正しくない。日本にも重大な影響を及ぼす問題であるのは何故か、5つの理由を挙げてみたいと思う。

 第一に、ウクライナ・クリミア問題の本質が武力ないし武力の威嚇の下で国境線を変えようとする試みであることだ。これは国際社会の秩序を維持するために、国連憲章にも盛られている大原則に反する。

 ロシアは、「クリミアの住民の60%はロシア系で、ロシア人保護のために行動を起こした」とし、「住民投票は民族自決権に基づく」とする。しかしながら、クリミア自治共和国はあくまでウクライナの主権の下にあることはロシアも承認していたわけであり、ロシアの行動が国際法に違反していることは疑いの余地がない。大国であり国連常任理事国であるロシアの行動は、国際秩序に致命的な影響を及ぼす。

 第二に、ロシアの立ち位置が変わる重大な転機となる可能性があることだ。ソ連邦が1991年に崩壊して以降、欧州の歴史はソ連圏を構成していた東欧諸国が雪崩を打ってEUやNATOに加入し、いわゆる「西側」の境界線がどんどんロシアに迫っていく過程にあった。旧東欧諸国だけではなく、バルト三国もEU、NATOに加入した。

 残されたウクライナなどもEUとの連合協定に向けて動き出したところ、ロシアは厳しい圧力をかけ、EUとの連合協定を断念させ、ヤヌコビッチ大統領のウクライナは親ロに舵を切った。