迷いや羞恥心は、確信と自信に変えていける

安藤 夏子さんは、なぜ「投資ファンドの会社を辞めて起業する」という勇気を持てたんですか? もう何万回も聞かれた質問かもしれませんが(笑)、みんな気になるところだと思うんです。ごく普通に会社員として働いていた女性が、どうして起業を、しかも日本にはないビジネスモデルを立ち上げて世界中の鉱山と取引をしようなんて思ったのか。

白木 よく誤解されるのですが、最初から「よし、ジュエリーで起業しょう!」と思っていたわけではなくて。初めのころは、何をやるか、どうやるか、ブレてブレて仕方がなかったんです。

安藤 えっ、夏子さんもそういうときがあったんですね。

白木 もちろんありましたよ。「国際協力」をテーマに考えてはいたのですが、具体的にはまったく固まらなくて。マイクロファイナンス、投資会社、ファッション……本当、いろいろ考えました。その選択肢のひとつに、ジュエリーがあったんです。

安藤 そうだったんですね。

白木 最終的に自分の原点や経験に立ち返ってジュエリーを選んだのですが、「これだ!」と決めるまでは本当に苦しかったですね。自分が何がしたいのか分からないときが、人生でいちばんつらかったかもしれません。

安藤 なによりも、目標がない状態がつらかった、と。

白木 ええ。しかも、「これだ!」と決めてすぐに自信を持って進められたかというと、そうではなかった。実は……どこか「恥ずかしい」という気持ちがあって。

安藤 恥ずかしい?

白木 働きながら事業計画を起業家の方々に見ていただいたのですが、自分でもつたない計画だと分かるんです。だから、その不完全な計画書を手に相談するのは本当に恥ずかしかった。無謀だと思われないか、嘲笑されないか、勝手に心配になって。

安藤 ああ、わかります! 私も最初のころ、「独立して何をやるの?」って聞かれるのがすごく恥ずかしかったです。自信がなかったからだと思うんですが……。

白木 そうですね。羞恥心は自信のなさから生まれると思います。私の場合、日本で初めてのビジネスモデルだから、できるかどうかもわからない。頓挫してしまったら大嘘つきになってしまう。毎回、穴があったら入りたいような気持ちでした。
けれど、だんだん「私に経験がないのは仕方がない。それにきっとこの人も、私が思うほど私に期待していないはず」と思うようになって。

安藤 吹っ切れたんですね。

白木 ええ。タダで付き合っていただいてるんだし、何も失ってないはず、と(笑)。そこから開き直って、それまで以上にHASUNAの構想を話すようになりました。「これ、いいんじゃない?」「こうすればもっとよくなるよ」とフィードバックをもらうごとに確信を重ね、次第に自信を持ち始めることができたんです。

安藤確信と、自信。いい循環ですね。

白木 ブレてブレて仕方がなかったけれど、私の場合、たくさんの方に相談して、背中を押していただくことで揺れが固まっていきました。だからこそ、最後は自分で「これだ!」と決められたんです。

安藤 なるほど。いろいろな人に背中を押してもらいつつも、やっぱり最後は自分で決断したんですね。
この本の帯に「今こそ人生の舵をとれ!」とありますが、良い航海士になるには経験を積むしかないんですよね。ずっと天気に恵まれて、航路どおりに進んで、追い風に吹かれつづける……なんて船はなかなかない。

白木 それは「一流の航海士」というわけではないですしね。たまたま運がよかっただけで。

安藤 嵐に遭遇したらそれも経験、航路を外れたらそれも経験、向かい風でぜんぜん進まなくなってもそれも経験。そう腹を決めて進み続けるしか、一流にはなれない。「もういやだ!」と思うような経験を何度も経て、ようやく自信と確信、そして勇気が持てるようになる。今、夏子さんのお話を聞いてそう思いました。

白木 荒波に揉まれて「もう転覆する!」と思っても、一晩明ければからり晴天。なんて状況は、まさに人生と同じですね。