産業用エレクトロニクス各社の事業ポートフォリオ改革は、2008年後の金融危機後に大きく加速し、目途を付けた。産エレセクターの次の注目点は、コア事業の成長戦略の成否にかかっている。トップピックとしては富士通と日立製作所の2社を取り上げる。

事業構造改革は終了
コア事業の拡大が投資テーマに

ひらかわ・みきお
慶應義塾大学経済学部卒、コーネル大学にてMBA 取得。1996年東京三菱銀行入行。2000 年メリルリンチ日本証券入社、2004 年まで社債などの引受・シンジケーション業務を行う。2006 年より株式部に所属。自己資金運用、コーポレートアクセス部門を経て、2009年より調査部所属。

 緩やかなスピードに留まっていた産エレ各社の事業ポートフォリオ改革は、2008年後の金融危機後に大きく加速した。(1)半導体などデバイス・コンポーネント事業の縮小(一部例外あり)、(2)携帯電話端末事業やテレビなどBtoC事業の縮小、(3) 重電・社会インフラ事業の強化、という3つの軸に沿って進められた事業ポートフォリオ改革は、ほぼ終了したといえる。

 残る大きな課題事業は、富士通の半導体事業のみである。セクター投資判断のテーマは、不採算事業切り離しによる収益改善から、重電・インフラやIT・通信などコア事業での売上・利益拡大策へと移行している。

 図1は産エレ5社(日立・東芝・三菱電機・NEC・富士通)の営業利益構成(推定)の2001年3月期から14年3月期予想にかけての推移である。特徴は(1)電子デバイス構成比率の低下、(2)重電・インフラ事業構成比率の上昇、の2点。01年3月期はまだ半導体・デバイス事業が各社の収益において40%と大きな比重を占めていたが、14年3期の構成比率は半減の20%と推定する。なお、この20%は、ほぼ東芝のNANDフラッシュメモリーで占められている。

 NECエレクトロニクスや旧ルネサスなどロジック半導体事業の構造改革は、富士通を除き終了している。重電各社の中国エレベータ事業の拡大や東芝のウェスチングハウス(米原発メーカー)買収など、積極的な経営施策により、重電・インフラ事業の構成比は01年3月期の16%から14年3月期33%に倍増する予想である。

出所:会社、BofAメリルリンチグローバルリサーチ