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「デジタルな日常」を生きる

Yelpは、アメリカをおいしくしたか?
――米国で実際に利用するユーザーとしての視点

松村太郎 [ジャーナリスト・著者]
【第17回】 2014年4月25日
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 これにより、広告を出して目立つだけでなく、本当に顧客から評価されるにはどうすれば良いか、というアイディアで店舗運営を行うようになる。このことは、ローカルのお客さんに伝わり、これがYelpに書かれることでポジティブな循環を店舗自ら作り出していくことができるようになるのだ。

 Yelpと日本のサービスの比較として、レビューや評価が実名か匿名(ハンドルネーム)かという違いが強調されている。しかしこの顕名性の面はあまり重要ではないかもしれない。Yelpが作り出しているポジティブな循環こそ、コミュニティを重視することによって生じるYelpを使う価値となる。

 Yelpが「ローカルビジネスと地元の人を結びつけるプラットホーム」であると捉えれば、他のレストラン検索のサービスとは異なる点が理解できるのではないだろうか。

モバイルで、スモールとローカルを
力強く育むサービスを作ろう

 もう1つは、スモールスタートを非常に強くサポートしてくれる点だ。

 Yelpのレストラン検索は前述の通り、自分の位置情報を元にして結果を地図上にマッピングしてくれる。そのため、新しくできた店舗を地元の人が発見するよいツールにもなっているのだ。店舗の情報を登録することは、地元のタウン誌などに広告を出稿するようなコストはかからない。

 また、最初の顧客とコミュニケーションを取って、ニーズをつかんだり、どんなサービスが喜ばれるのか好みを集めることもできる。地元に根付く老舗でなくても、Yelpを活用して見つけてもらい、前述のポジティブな循環を素早く作り始めることができる。このことは、新しいビジネスの出店を促進させ、結果としてローカルビジネスを育むことに貢献する。

 サンフランシスコ周辺とモバイルテクノロジーを俯瞰してみると、スモールビジネスやローカルビジネスをテクノロジーがサポートしている様子に気づくことができる。例えば本コラムでも紹介したSquareも、スモールスタート、ローカルビジネスであっても、すぐにクレジットカード決済に対応する事ができ、顧客の利便性を手軽に確保できる手段となっている。

 都市の成熟をモバイルテクノロジーが作り出し、新しくビジネスを始める人々は、お客さんがモバイルやソーシャルといったテクノロジーを活用して都市で振る舞うことを前提にして、前述のポジティブな循環を作り出そうとする。

 これからモバイルテクノロジーを活用した新しいサービスを考える際、こうしたスモール・ローカルというビジネスをいかに力強くサポートするか、そして都市の中でのコミュニティ形成ができるプラットホームをいかにつくるか、という2点が、非常に重要なサービスのデザインパターンになっていくのではないだろうか。

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松村太郎
[ジャーナリスト・著者]

まつむら・たろう/1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「スマートフォン新時代」「ソーシャルラーニング入門」など。

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スマホ、SNSなど、毎日の暮らしに欠かすことのできなくなったネット環境とデジタルツール。その一方で、セキュリティやプライバシーの問題、ツールへの依存、ネットコミュニティとの関わり方など、日々新たな問題が現れ、状況は変化している。私たちは「デジタルな日常」をどう生きていけばいいのか、米国シリコンバレー在住の記者が、生活者の目線で解説する。

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