アメリカのベトナム戦争(1960年代から70年代初頭)、旧ソ連のハンガリー(1956年)やチェコ(1968年)への侵攻などは、すべて集団的自衛権の行使を大義として行われました。近年ではNATO諸国のアフガニスタン攻撃も、アメリカの求めに応じた集団的自衛権の行使であるとされています。「集団的自衛」という言葉からは、弱い国同士が寄り集まって強大な国に対抗する、といったイメージが湧きますが、過去にはそのような形で集団的自衛権が行使された事例はなく、むしろ大国の第三国への軍事介入を正当化するための根拠にされてきたといえます。

 政府は、1954年に自衛隊が創設されて以来60年間、一貫して、集団的自衛権を行使すること、すなわち自衛隊が海外で武力行使をすることは、憲法9条によって禁止されている、と説明してきました。その理由は、以下に述べるとおりです。

 ちなみに、集団的自衛権について、しばしば「持っているのに、行使できない権利」などと揶揄されますが、「持っている」というのは、それを行使することが国際法上認められるということに過ぎず、国にそれを行使させるかどうかは憲法その他の国内法において、国民の意思で決めることですから、「持っているのに行使できない」国家の権利が存在するのは当然であり、このことに何の矛盾もありません。

政府の憲法9条解釈

 日本国憲法は、第2章を「戦争の放棄」と名付け、第9条の1条だけを置いています(注参照)。この9条は第1項と第2項で構成されていますが、第1項と似た規定は1928年に締結されたいわゆるパリ不戦条約にあり、イタリアなど外国の憲法にも散見されるもので、珍しいものではありません。日本国憲法の特色は、9条第2項の規定にあります。そこでは、わが国が「陸海空軍その他の戦力」を持たないこと、そして「交戦権」を認めないことが明記されています。

(注)
第二章 戦争の放棄
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。