福田康夫首相は18日の施政方針演説で、消費者行政を一元化して、その新組織に強い権限を付与する方針を打ち出した。これを受けて、自民党の消費者問題調査会(野田聖子会長)は、「消費者行政庁」設置構想を取りまとめた。
政府・与党は、この構想を、年金、独立行政法人、規制改革と失策が続きで急落した世論の支持を回復する起爆剤にしたいという。しかし、その唐突な印象の通り、中身はあまりに稚拙でお粗末な内容だ。なぜ、各省庁が従来、消費者無視の業者行政を優先してきたかの分析を怠っているうえ、現状の「消費者行政庁」設置構想は「小さな政府」という行政改革の流れにも逆行する。言い換えれば、哲学なき愚策に過ぎないのだ。
「今年を生活者や消費者が主役となる社会へ向けたスタートの年と位置付け、あらゆる制度を見直していきます。(中略)各省庁縦割りになっている消費者行政を統一的・一元的に推進するための、強い権限を持つ新組織を発足させます。併せて消費者行政担当大臣を常設します。新組織は、国民の意見や苦情の窓口となり、政策に直結させ、消費者を主役とする政府の舵取り役になるものです。すでに検討を開始しており、なるべく早期に具体像を固める予定です」
「公正な市場競争」の視点がない
業法の不備を正すことこそ先決
1月18日の金曜日。年初から世界的な同時株安を先取りする形で東京株式市場の急落が続き、景気後退懸念が一段と高まる中で、福田首相は、国会で、所信表明演説を行い、この「国民本位の行財政改革」という構想を打ち出した。構想は、抜本的な景気浮揚策や成長力回復策、あるいは株価対策を望んでいた市場の期待を見事に裏切った。そして週明けの東京市場は日経平均株価がたった2日間で実に1300円近くも下落する事態に直面した。