経営 × オフィス

目の前にいない部下を、どうやって評価するか?
――「働き方変革」推進企業の人事部が越えた壁

河合起季
【第2回】 2014年6月13日
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導入後すぐに時間外労働が2%ダウン、
勤続意識が5%アップ

 実際、この新制度について社員はどう感じているのだろうか。社内アンケート調査の結果を見てみよう。

 導入当初は、私生活・仕事に対する満足度について7~8割が「良くなった」と答えた。「子どもを保育園に迎えに行きやすくなった」「通勤時間を他のやりたいことに使えるようになった」と、上々のスタートが切れたようだ。

 仕事の生産性についても5割以上が「良くなった」と回答。「仕事の計画を立てる意識が高まった」「仕事の中断がなく集中できる」といったコメントが寄せられた。

 そして導入から約3年経った時点でも、勤務諸制度の活用度については6割が「活用できている・まあ活用できている」と回答。成果についても「満足・やや満足」が約6割、コミュニケーションの実現度についても「実現できている・やや実現できている」が約6割を占め、ともに堅調に推移していることが示された。「商談の準備に費やす時間が増えた」「商談内容の質が向上している」など、お客様満足度の向上でも成果が出始めているようだ。

 注目したいのは、売上高が前年比20%増という中で、時間外労働が2%ダウンしたこと、それと「定年まで同社に勤めたい」という社員が3年前に比べて5%もアップしたことだ。

 「コメントを見ると、多くの社員がテレワークやフレックスタイムで働ける環境にロイヤリティを感じていることが伺えます」

 なかでも、ワークライフバランスを重視する若い社員に勤続意識の高まりが感じられるという。これからの時代、ワークライフバランスが適正でなければ、優秀な人材を確保できなくなる可能性が高いことを考えると、この点も大きな成果といえそうだ。

顧客満足度の向上と
多様化する社員ニーズへの対応が課題

 では、今後の課題は何か。

 下田氏は、その1つとして、顧客満足度のよりいっそうの向上を挙げた。

 「お客様への訪問回数や対応時間がどれだけ増えたか、社内の在籍率がどれだけ減ったかなどをKPI(目標達成度合いを計る指標)に設定していますが、これをもっと伸ばしていきたい。事前準備や提案内容については質の向上が感じられますが、さらに改善できると思います」

 前述したテレワークを積極的に利用し、通勤時間や移動時間を効率的に使える社員が増えてくれば、これらは自ずと上がってくることだろう。

 もう1つは、多様化する社員ニーズへの対応だ。育児や介護だけでなく、自分のライフスタイルに合わせた働き方を望む社員はどんどん増えているという。

 「海外留学や資格取得などのキャリアアップ、社会貢献などを目的とした休職や退職が最近出始めています。つまり、社員の価値観や人生設計が多様化しているんですね。こうした社員も引きつけておくことができるように、価値観の多様化を前提としたワークスタイルを検討していくことも大きな課題です」

 これからの時代、一定の価値観、人生設計の社員しか働けない会社はもう生き残れないかもしれない。労働人口減少や生涯現役時代の到来を見据えると、優秀な社員を長期にわたって引きつける人事戦略が求められているといえそうだ。

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