人口減少、ダイバーシティ、グローバル化が
ワークスタイルの変革を呼び起こす
ビジネス環境や経済状況が目まぐるしく変化するこの時代、企業が競争優位性を築くためのキーワードとして浮上しているのが「ワークスタイル変革」だ。
社員の「働き方を変える」ことで、ビジネス機会の創出、生産性の向上、組織のフラット化、雇用・就労形態の多様化、コミュニケーションの円滑化、ワークライフバランスの適正化などにつながると期待されており、本格的に取り組む企業も増えてきた。
このイノベーションで重要な役割を担うのがITである。端末やデバイスの多様化、ネットワークの高速化、クラウドサービスの進展などによって、日々更新・蓄積されていく膨大な情報に、いつどこにいても瞬時にアクセスできるようになった。会社にいなくても情報収集や資料作成が行えるし、離れた場所にいる人ともシームレスにコミュニケーションが図れる。こうした技術革新のおかげで、どこだって“職場”にすることができるようになった。まさにワークスタイル変革の機は熟したといえるだろう。
さらに、今後予測される人口減少をはじめ、ビジネスのグローバル化への対応、ダイバーシティ(人材の多様性)の推進、雇用・就労形態の多様化といった問題への対応も迫られている。
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労働力が減少すれば、頼みの綱となるのは女性や外国人など。少子高齢化が進むなか、環境さえ整えば、子育てしながら、あるいは親の介護をしながら働きたいという優秀な人もたくさんいるだろう。そうした会社の財産となる人材を確保するためにも、在宅勤務やフレックス制の導入など、働き方の選択肢の提供が求められるようになっている。
働く環境を疎かにすると、牛丼チェーン「すき家」が人手不足で相次いで営業時間の短縮や休業を余儀なくされたごとく、企業はしっぺ返しを受けかねない。IT戦略のアドバイザーとして活躍する、アイ・ティ・アール代表取締役、内山悟志氏(プリンシパル・アナリスト)は、こうした現象はいずれ他の業界にも飛び火すると、警鐘を鳴らす。
「人材不足の影響は今、外食産業で出始めていますが、今後、ホワイトカラー比率が高い業界や企業に及ぶことは間違いありません。ですから、その対処策として、単なる福利厚生ではなく、企業戦略として社員が働きやすい職場環境を整えることがより重要になると思われます」
実際、就職したい企業の調査では、以前は上位を占めていた総合商社や外資系金融などの勢いがやや後退するなかで、サイバーエージェント、DeNA、グリーなどが人気上位に顔を出すことも増えてきた。こうした新興企業はいずれもワークスタイル変革に取り組み、チャレンジ志向やモチベーションを高める人事制度、若くても新規事業にトライできる環境などが魅力となっているようだ。
アパレル専門ネット通販を運営するスタートトゥデイや、ソフトウェア会社のワークスアプリケーションズなどは、その斬新な就労スタイルで注目を集めている。
ただ、現実問題として、多くの伝統的な大企業は従来の会社のカタチに固執する古い体質のまま。