私たちは、禁止されると、それを破ってみたくなるという天邪鬼な心理がある。
「これはサンプルでお売りできないんですよ」と言われると、なぜかその商品がほしくなるものだし、「製造が間に合わないんで、発売が延期になったんですよ」と言われると、無性にその商品がほしくなるところがあるのだ。
この心理を逆手にとった会話術のテクニックが、脅かし法(Flight Challenge)である。これはアメリカの説得研究家であるジョエル・バウアーと、マーク・レヴィの2人が明らかにしている方法である。
彼らは、このテクニックの例証として、サーカスや大道芸人などの司会者の例をあげている。優秀な語り手は、次のような前口上で観客を集めるのが普通だ。
「お集まりのみなさん。これからお見せするショーは、信じられないほどショッキングで、心臓が飛び出しますよ。賢明な人なら、絶対に見ないようなショーですよ!」
こうやって大声を張り上げていると、どんどん観客は増えていく。「賢明な人なら、見ない」と言っているにもかかわらず、観客は増えるのである。
「見るな」と言われると、かえって見たくなるのが人情だとバウアーとレヴィは述べている。脅かし法という名前はついているが、いわば「禁止法」である。
この原理は、“会話に相手を引き込んでいく方法”としても利用できるだろう。
「ああ、こんな話をしちゃってもいいのかなぁ、まぁ、○○さんだからいいか」