希望しない人事異動、大声を出して怒る上司、ミスばかりする部下……。仕事の悩みは尽きないものだ。しかし今、対人関係の悩みを解消し、前向な思考が得られる「アドラー心理学」が注目されている。大手家電メーカーに勤める、ある課長は、仕事への悩みを誰にも打ち明けられないでいた。そこで、アドラー心理学の教えを説く「哲人」を訪ねた。

課長 なるほど、アドラーの考え方を取り入れれば世界はシンプルに見える、と。それは期待できそうだ。

Illustration by Yumiko Hoshino

哲人 今日はよく来てくれました。そう、世界はシンプルなところです。しかし、最初に言っておきます。あなたの抱える課題を解決できるのは、あなただけです。私はその手助けをすることしかできません。

課長 まぁいいでしょう。とにかく私の悩みを聞いてくださいよ。実は、人事異動で希望していない部署に飛ばされまして……。それから、全くやる気が出ないのです。

哲人 ほう。なぜ、ですか?

課長 やりたくない仕事だからですよ。

哲人 今の私にやる気がない(結果)のは、部署の異動(原因)によるものだ、と。そういうことですね?

課長 その通りです。前の部署では真剣に働いていたのですから。

哲人 さて、もしあなたがおっしゃるように、全てのビジネスマンが、仕事の内容によってモチベーションを決めているのだとしたら、おかしなことになりませんか?

 希望しない部署に異動したにもかかわらず、高いモチベーションを保っている人は居ないのでしょうか?

課長 そりゃあ、居ると思いますけど。