消費財が軒並み腰折れするなかで、底堅い動きをみせているのがペットのマーケットだ。ペット用品の市場規模は、ここ5年間で二ケタ成長を遂げ、1兆1000億円になった。日本ペット協会の予想では、2010年に2兆円市場へと拡大するのだそうだ。
アパレル業界でもペット服は市場規模こそ小さいものの、成長市場だ。矢野経済研究所によれば、2007年のペット用服の伸び率は13.4%に達したという。
一昔前には、犬に服を着せるなんてといぶかる声もあったが、チワワなどの小型犬ブームで、「犬の服」への抵抗は明らかになくなってきている。散歩やドッグラン(犬専用の遊び場)など愛犬家の交流の場も広がっていることも、ペット服市場の拡大に一役買っている。
この有望市場で「圧倒的なシェア」(業界関係者)を持っていると目されるのがクリエイティブヨーコなる会社。表参道ヒルズの直営店は、海外セレブが犬用服をまとめ買いに訪れたことで話題になった。その同社が今年10月1日にアパレル大手のオンワード樫山の傘下入りし、注目を集めている。
長野県に本社をかまえるクリエイティブヨーコが犬用服に参入したのは2000年。信州大学に留学してきた中国人学生らをスタッフとして起用し、中国の委託工場に技術指導を行ない、品質を武器に日本トップの犬用服メーカーにのしあがった。
現在、国内店舗は「ペットパラダイス」など146店。2008年9月期の売上高は86億円、営業利益は7億円を見込む優良企業。オンワードの傘下に入るにあたって、実は最初にラブコールを送ったのは、クリエイティブヨーコ側だった。「会社の成長のためには海外展開が不可欠」と同社の伊藤洋子社長(当時)が判断。今でも、ニューヨークや台湾、シンガポール、韓国に10店(FCを含む)の海外店舗を持つ同社は、オンワードの力を借りてさらに加速させたいと考えた。
そもそも、犬用服の価格は1000円程度のTシャツから数万円のものまでさまざまだが、中堅以上のアパレルが参入するのは容易ではない。数店を展開しただけで撤退した例も多く、“難しい市場”とされる。打診を受けたオンワードとしても願ったりかなったりだ。
「犬種によって異なるサイズや品揃え、着脱のしやすさ、丈夫さなど、犬用服はノウハウの塊で、海外でもこれだけの完成度で作っているところはない」とオンワード樫山の廣内武会長も目を細める。
オンワードの傘下に入ってから伊藤社長は代表権を持たない会長に、夫で専務だった俊二氏は専務執行役員になる。廣内会長は「ジル・サンダーやジョゼフ(いずれもオンワードが買収した欧州ブランド)で愛犬とのペアルックを企画できそうだ」と期待を膨らませる。
海外の有名ブランドのなかにも、犬用服を展開したいという申し出が尽きないそう。アパレル業界でもペットブームが沸き起こりそうである。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 大坪稚子)