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スマートフォンの理想と現実

NTTドコモはなぜインドで失敗したのか

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第64回】 2014年7月2日
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付加価値サービスの立ち上げにつまずいて
価格政策がアダに

――3Gの進展が遅々として進まなかった影響はあるのでしょうか?

繁田 ARPU(1契約当たりの月間平均収入)が伸びていない一因はそこにあると思います。09年当初頃はARPUも200ルピー超だったと思うのですが、春先の公表データを見ると116ルピー。半値近くまで下がっていますね。

 元々ドコモがタタのGSMに参画するにあたっては、「付加価値サービス」とか「技術支援」といったところがあったかと思うのですが、付加価値サービスが立ち上がらなかったこと、それに伴いARPUが横ばいから低下に向かってしまったのは否めないでしょう。但しこれはドコモに限った話ではなく、市場全体の課題でもあります。

――タタドコモが自ら仕掛けた料金プランによる競争激化も、付加価値サービスが立ち上がらないと、むしろ自らのARPUを押し下げる要因になってしまいますね。

繁田 インドもプリペイドが中心なので、SIMやオペレーターに対する消費者のロイヤリティは、薄いといえます。特に価格重視のマス消費者からすれば、安いSIMを買うことこそが便益であり、別にどこのブランドでもいい。乗り換えも簡単です。だから付加価値サービスを構築することは、各事業者の課題となっています。

――付加価値サービスが立ち上がりにくく、一報で大衆は徹底的に安価なサービスを求める。なかなかタフな市場のように思えます。

繁田 インドの消費市場の特徴を考えると、価格にうるさい消費者が圧倒的な多数で、付加価値路線は全体の1割にも満たないという構成です。ただこのところ、高級路線が売上のシェアを占める状況も出てきている。加入者数1位のBharti Airtelなどは、売上の17%がデータサービスからという状況になっています。同社は全体で約2億程度の加入者数で、3Gはわずか800万程ですが、そこからのデータサービスの売上が、大きく育ちつつある。

 一方、タタの2013年度発表資料を見ると、「ムンバイ&マハラシュトラでうまくいっている」ということが強調されています。しかし逆に言えば、成功しているのは局地的で、実際には将来的な事業の潜在能力に依存しているようにも思えます。公開資料から見られることなので他に議論の余地もあると思いますが、Bharti Airtelの推移と比較すると、タタドコモも本来であれば付加価値向上による成長余地があったのではないでしょうか。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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