NTTは、NTT東西の事業構造を光回線の“卸売り”へと大きく転換する。今なぜ卸売りなのか。鵜浦博夫・NTT(持ち株会社)社長に、その胸の内を聞いた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)
──NTT東日本、NTT西日本のビジネスモデルを回線の“卸売り”へと大きく転換したのはなぜでしょうか。
われわれは、固定電話時代の規制により、地域や長距離・国際、移動などと分け、電話時代の構造でビジネスを行っています。
しかし、顧客からすると、一つのことを進めるのに、「同じNTTグループなのに、あっちにも、こっちにも話さないといけない」。そんな声をよく聞きます。そのたびに、私も「すみません」と頭を下げていました。
だからといって、(グループ統合を禁じた)規制を変えようとしても容易ではない。むしろ、われわれが構造問題を理由にして、やるべきことをやっていないのではないか、そういう気持ちを抱いていました。今回の件も実は、2010年ごろから考えていました。
──当時は、ブロードバンドを全世帯で利用できるようにする「光の道」構想が掲げられ、NTT東西のインフラ部門を切り離す議論が真剣に行われていました。
ええ、副社長のころでした。われわれは固定回線と無線回線をうまく組み合わせる時代が来るとみて、光回線の利活用を考えるべきだと主張していましたが、「東西を設備会社にすべき」という議論が起きました。最終的には阻止したのですが、このときには何の満足感も得ることができませんでした。
このころから、東西の存在意義とは何なのかを考えざるを得なくなったのが、正直なところです。