日本の成功事例をグローバルに展開したとき
痛感した、認識や文化のズレを埋める難しさ
並木 距離が近すぎてクライアントに寄り添った意見しか出せなくなるといった弊害もある一方で、プロジェクトごとにコンペをしてコンサルティング・ファームをその都度選ぶのではなく、長期的に密接な関係を築いていくスタイルが欧米では浸透しているのも事実です。こうした関係性には、クライアントが相談したい時にいつでも相談に乗れるというメリットもあります。企業とコンサルタントはどういう距離感で付き合うのがベストなのでしょう?
池田 べったりの関係ではなくて、対等な立場で議論できる関係にあることが重要だと思います。企業側が求めているのは、あくまで客観的な視点ですからね。そしてコンサルティング・ファームに発注する経営者も、ちゃんと聞く耳を持つこと。あとは先ほども言った通り、リーダーが自社の人材でできることを見極めて適切に判断する。そうすればコンサルタントを活用しながら会社を伸ばすことが可能になるのではないでしょうか。
並木 池田さんが経験した中で、コンサルティングを活用して成功したケースとして挙げられるのはどんなプロジェクトですか?
池田 セールスに特化したコンサルティング・ファームと、営業部門のマネジメント・システムを構築したプロジェクトは業績の改善に大きくつながったという手応えがありました。営業マンが抱えているクライアントの数や関係性を整理して、それを上司がフォローアップできるシステムを、何年もかけて改善を繰り返しながら構築したんです。営業活動の効率化はもちろん、仮に担当者が変わっても、クライアントとの関係性が今どこまで深まっているのか、これからどういうステップを踏んでいくべきか、といった情報を引き継げるよう仕組み化したシステムです。これは日本発のプロジェクトとして実行しました。
並木 本社の反応はいかがでしたか?
池田 日本以外は共通のシステムを使っていましたから、日本だけが独自のシステムを構築することにはどちらかと言うと消極的だったと思います。しかし結果としてうまくいっていることを知って、本社でも同じコンサルティング・ファームを使って日本式のシステムに倣ったグローバルの新システムを作ることになったんです。
そこまでは良かったんですが……新たにできたシステムは日本で構築したシステムとはかなり異なるもので、決して使いやすいとは言い難いものになってしまった。我々は「プロセス」を管理することこそが大事だという視点でシステムを作ったのに、欧米ではどうしても結果としてのパフォーマンス、売上げの管理に躍起になってしまうんですね。しかも3年後、5年後を見据えることなく、単年度の売上げばかりに関心が向いている。そうした認識のずれを埋めることはなかなか難しい作業です。結局、日本はまた日本流のシステムを使うことにして、最終的にはグローバルでも日本のシステムが導入されることになりました。
並木 日本で成功したものを参考にしつつ本社が新たな解釈を加えてグローバル用に作り直したら、全く違うものになってしまったと……何とも歯痒いですね。