今年1月末、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)の第5代チェアマンに就任した村井満氏。リクルートで長く人事部門に携わり、人材紹介サービスのリクルートエージェントや、ヘッドハンティングを手がける海外の関連会社では経営者としても活躍してきた。人材ビジネスのプロは、これまでのキャリアの中で経営コンサルタントたちとどのように付き合ってきたのだろうか。Jリーグという新たな舞台でチャレンジを続ける村井氏に、コンサルティングの賢い活用術を聞いた。(構成:日比野恭三)
並木 私は経営コンサルティングという仕事を15年近くやってきて、クライアントに心の底から本気で感謝されたことは実のところ数えるほどしかなかったように思います。仮に100のプロジェクトをやってきたとしたら、クライアント企業の経営者から興奮さめやらぬ様子で握手を求められ、「並木くん、本当にありがとう。これからも、ずっと一緒に歩んでいこう」と言われたのはほんの4、5回かもしれない。今回の対談では、コンサルティングを活用する企業側の本音を村井さんに伺って、コンサルティングという仕事への取り組み方を改善するためのヒントを探りたいと思っています。
村井さんは、リクルート時代も含めてコンサルティング・ファームとどんな仕事をされてきましたか?
村井 いろんな場面でお力添えをいただいてきましたね。マッキンゼーやBCGといった大手のファームや、野村総研のようなシンクタンク系、それにもっとコストの安いところに頼むこともありました。用途に合わせて使い分けていたと思います。
並木 用途による使い分けというのは、具体的にはどういうことでしょうか。
村井 まずは、経営課題に対して解決策を提示してもらうというベーシックな使い方。これにはふたつのパターンがあって、ひとつは成熟した既存市場を舞台としたビジネスにおいて、市場を細分化してビジネス・プロセスの因果関係をはっきりさせたり、顧客分析をお願いしたりする「微分」系の依頼です。もうひとつは、例えば海外進出など新たに市場を創造していかなければならない時に、未知の市場に対する戦略の描き方を提案してもらうケースですね。
それから、誰を説得するかによって使い分けることもありました。もう答えは出ているんだけど、「役員会を通すためのファクトを揃えてくれ」と社内的な説得材料の収集を依頼することもあれば、発注主である経営者が何らかの想いを抱いていて、自分自身を納得させるためにレポートを出してくれと頼むケースもある。
並木 各々のパターンで、コンサルティングの成功する確率に差は出るものですか?
村井 差はありますね。時間に余裕があれば自分たちでもできるけれども、時間短縮のための“ソロバン”としてコンサルタントに頼むことってありますよね。例えば先ほど申し上げたような、明確な結論がすでにあって、役員たちを説得するためにその結論に至るストーリーを固めてもらうような時。これは時間や労力をお金で買うようなものだから、成功確率としては高いんです。ただし、そうしたケースはどちらかというと例外的で、ニーズは低い。