欧米企業でコンサルの提案が
すんなり受け入れられる理由とは?

池田 そもそもコンサルタントを雇う最大のメリットは、業界の空気にどっぷり浸かってしまった人にはない思考回路で事業の課題や将来性を考えられることだと思います。特に帰属意識の強い日本人の場合は全く新しい視点に立つということが苦手ですから、外部から新鮮な見方を提供してもらうメリットは大きい。

 ただし、コンサルタントの提示したプランを実行して成果につなげるためには、リーダーがその内容をしっかりと咀嚼して、部下に伝えるプロセスが不可欠です。最終的に動くのはあくまで従業員ですから。自社の人材にそのプロジェクトを実行するだけの能力や知識があるかどうか。そうした点を見極めたうえで部下を納得させて引っ張っていくリーダーシップがなければ、どんなに良い提案も絵に描いた餅に終わってしまいます。コンサルタントの提案を鵜呑みにして部下に押しつけるやり方では、まず成功しないと思います。

コンサルを重用する欧米企業において<br />日本支社は戦略の実行段階で葛藤するインタビュアーの並木裕太さん

並木 コンサルの価値を引き出すのもリーダーの資質にかかっているということですね。しかしなぜ、欧米ではコンサルタントの提案を“検証する”という発想がないのでしょうか。

池田 やはり、「コンサルタントの言うことは正しい」という風潮が染みついているのではないでしょうか。向こうの従業員たちの意識は、表面はともかく自分自身のキャリアアップに向かっており、企業の発展のために自分を犠牲にして尽くすという意識が希薄な面があります。最終的には経営者になりたいなどと、それぞれが個人としてのゴールを持っていて、働いている会社はその自己実現のための通り道でしかないんです。思い思いの意志を持った人たちの集まりですから、社内の意見を取りまとめて「こうしましょう」と決めても、全員が同じ方向を向いて動くことがなかなかできない。でも、コンサルタントの見解として提示された方向性に関しては、みんな疑問を抱くことなく足並みが揃うんですよ、不思議なことに。

並木 なるほど。私は、欧米でコンサルの提案がすんなり受け入れられるのは、クライアントとの距離の近さの表れでもあるような気がしています。アボットのようにCEOがコンサル出身者だったり、取締役にコンサル出身者が多く名を連ねている大手企業はむしろ普通ですし、契約形態もプロジェクトごとではなく年間契約になっているケースも多い。池田さんは、そうした「近さ」を感じたことは?

池田 確かに、お互いの距離は日本と比べて非常に近いですね。本社の会議に出席すると、発言者が社員なのかコンサルタントなのか分からないようなこともありました。ただ、コンサルタントが自分を雇ってくれている人の思ったようにしか動かないことがよくあります。業界の内外でいろいろな経験を積んでいるからこそ客観的な意見を出すことができるはずなのに、発注者の考えをサポートするような発言しかしない。コンサルティングのテクニカルな手法や新しいコンセプトを用いて意見を出してはくるんですが、実はその方向性は雇い主の方針に沿ったものばかり、ということが多かったと思います。ただ、うまくかみ合ったときには、大きな成功につながったこともありました。