人材教育など継続性が大事な分野で
コンサルをコロコロ変えてはダメ

並木 池田さんご自身がコンサルティング・ファームに仕事を依頼する時は、どんな基準で選択されていましたか?

池田 実は私としては、どこに頼んでもそんなに変わらないと思っています。最後に決断するのは自分だという信念がありますから。強いて言えば、思い切った提案をしてくれるところでしょうか。

 それから、依頼先をコロコロ変えるのもあまりよくない。プロジェクトごとにコンサルティング・ファームを使い分けるというのなら問題ありませんが、例えば人材教育などで、人事担当者が変わるたびにコンサルタントも変わる、教育の手法も変わるというのでは意味がありません。こうした継続性が大事な分野では、例えば10年間、同じところにお願いし続けることで結果が見えてくるはずです。

並木 グローバル企業の日本法人のトップを長く務められた池田さんのお話には、多くのことを改めて気づかされました。

コンサルを重用する欧米企業において<br />日本支社は戦略の実行段階で葛藤する「世界中のコンサルティング業界に変革の時が訪れようとしている」(並木さん) 

私はコンサルタントがその価値を発揮できる理想的な環境は、次のようなものだと思っています。まず、クライアント企業あるいは経営者のビジョンに共感すること。次に、その実現のために、あくまで中立的な立場から最適な戦略・戦術を提案すること。そして、提案だけでなく実行のプロセスにも関与すること。

 ところが池田さんのお話から浮き彫りになるコンサルタントの姿は、発注者(主に経営者)の考えに沿った戦略を提案するだけの存在で、その実行は各国のオフィスに一任されている。もちろん高い志と情熱を持って働いているコンサルタントもいるとは思いますが、私の描く理想と現実の差を知って愕然とさせられました。

 それでも私は、こうした状況をチャンスととらえたい。コンサル大国である欧米にも腐敗の兆しがあるとすれば、それは世界中のコンサルティング業界に変革の時が訪れようとしていることでもあると思うからです。私はこの日本から、コンサルティングの原点に立ち返り、サービスのあり方やクライアントとの関係性を含めた改革をしたいという志を持っています。いつの日か、グローバルに展開する大手コンサルティング・ファームにも新たな職業観を提供できるように努力を続けていきたいと改めて感じた次第です。

 今日は本当にありがとうございました。