英マクラーレンが主役のレースに総合商社の双日が参戦──。

 マクラーレンと聞いて、F1への新規参入かと勘違いする方もいるだろうが、じつはこれ、国内のベビーカー市場の話である。

 同市場は、アップリカとコンビの国内2強がほぼ独占してきたが、2003年以降、その勢力図は激変。同年、欧米で断トツ人気のマクラーレンが参入すると、一躍ブームを巻き起こしたのだ。

 欧州製のベビーカーは、軽さを追求してきた国内メーカーの対極をいくバギータイプの重量級が多い。同社の売れ筋も、同タイプの国内製より1~2キログラム重い6キログラム強であるが、売りとするデザインが、出産後もおしゃれして外出したいという都市部の若い母親の心をとらえた。高い操作性と安定感も評判を呼び、08年には約10%までシェアを拡大、まさに業界の台風の目だ。

 その後、2匹目のドジョウを狙った海外メーカーの進出が相次ぎ、欧州製はいまや、国内の年間販売台数約65万台の3割を占める一大勢力になっている。

 そこに商機を見出した双日は、4年前の会社設立ながら早くも世界30ヵ国で展開する独サイベックスの輸入代理店となり、3機種を販売する。いずれも流行の欧州タイプで、機能性やデザインを重視した都会派ベビーカーだ。

 双日は「ヨーロッパ調のスタイルに加え、品質の追求はドイツ人気質。日本人には絶対受ける」と強調する。その自信には訳がある。「1975年から昨年まで、アップリカの販売代理店を務めており、国内のベビーカー市場を熟知している」(同社)というのだ。

 とりあえずは3%のシェア獲得を狙うというが、過熱するベビーカーレースで勝ち名乗りを上げられるのか、商社としての目利き力が試される。


(「週刊ダイヤモンド」編集部 山口圭介)