これはまずいぞ

 8月9日には、フランスの大手銀行BNPパリバが運用ファンドの解約凍結を発表。ドイツでも、中堅のIKB産業銀行の巨額損失が公表された。

 アメリカ景気の冷え込みが日本でも盛んに報じられ、ムーディーズ、S&P社がサブプライムローン関連の証券化商品を格下げしたと報じられた。9月には住宅ローン大手で中間層向け融資を得意としたカントリーワイドが経営危機と発表された。

 日本では、8月17日には日経平均株価が年初来安値を更新して1万5円台に落ち込んだ。

 この段階ではまだ公表されていなかったが、日本の多くの銀行も、サブプライムローンが証券化されたデリバティブ(金融派生商品)への投資で、巨額の損失を出し始めていたのである。
「これはまずいぞ」
融資を渋る銀行担当者の表情から、私は直感的な恐怖を感じ取っていた。

物件への投資はもちろん、不動産ファンド事業に乗り出すことで、エスグラントのバランスシートはパンパンに膨らませて突っ走っている。資金調達の手段は拡大しているものの、銀行の融資が止まるような事態になれば、エスグラントの業績は一気に落ちる。

 いや、それどころか、不動産価格の下落が始まれば、目一杯レバレッジを効かせて保有している不動産の担保価値も下がり、一気に経営破綻の懸念まで生じてくる。

 低頭して社長室から出ていく銀行担当者を見送りながら、私は自分の背筋に冷たいものが流れるのを感じていた。(つづく)


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『30歳で400億円の負債を抱えた僕が、もう一度、起業を決意した理由』

第2章 暗雲-- 「傲り」を象徴する出来事が<br />僕を蝕み始めていた【その4】<br />「銀行の融資が止まれば業績は一気に落ちる」

早すぎた栄光、成功の罠、挫折、どん底、希望……
「すべての経営者にとっての教訓だ」――藤田晋
「150%の力で走る起業家の現実を読んでほしい」――堀江貴文

起業した会社を上場させ、倒産して地獄を味わい、そこから復活するまでに経験した出来事から、私はたくさんのことを教えられた。 なぜ私は地獄を味わうことになったのか。 なぜ私は復活できたのか。 この5年間の出来事と、私自身が考えてきたことを、正直に書き留めておこうと思う。

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目次
○プロローグ  ベンチャー経営者であることを
○第1章 絶頂──ワンルーム販売から、総合不動産業。そして都市開発へ
○第2章 暗雲──「傲り」を象徴する出来事が僕を蝕み始めていた
○第3章 地獄──暗闇の断崖を転げ落ちながら必死でもがき続けた
○第4章 奈落──民事再生、自己破産、絶望しそうな淵の底で
○第5章 希望──2年間は修行と決めて真にやりたい事業を見つけ出す
○第6章 感謝──どん底で知った感謝とともに新しい道を歩いていく