これはまずいぞ
8月9日には、フランスの大手銀行BNPパリバが運用ファンドの解約凍結を発表。ドイツでも、中堅のIKB産業銀行の巨額損失が公表された。
アメリカ景気の冷え込みが日本でも盛んに報じられ、ムーディーズ、S&P社がサブプライムローン関連の証券化商品を格下げしたと報じられた。9月には住宅ローン大手で中間層向け融資を得意としたカントリーワイドが経営危機と発表された。
日本では、8月17日には日経平均株価が年初来安値を更新して1万5円台に落ち込んだ。
この段階ではまだ公表されていなかったが、日本の多くの銀行も、サブプライムローンが証券化されたデリバティブ(金融派生商品)への投資で、巨額の損失を出し始めていたのである。
「これはまずいぞ」
融資を渋る銀行担当者の表情から、私は直感的な恐怖を感じ取っていた。
物件への投資はもちろん、不動産ファンド事業に乗り出すことで、エスグラントのバランスシートはパンパンに膨らませて突っ走っている。資金調達の手段は拡大しているものの、銀行の融資が止まるような事態になれば、エスグラントの業績は一気に落ちる。
いや、それどころか、不動産価格の下落が始まれば、目一杯レバレッジを効かせて保有している不動産の担保価値も下がり、一気に経営破綻の懸念まで生じてくる。
低頭して社長室から出ていく銀行担当者を見送りながら、私は自分の背筋に冷たいものが流れるのを感じていた。(つづく)
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