どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか? この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、『客単価アップ大事典』に収録しきれなかった事例の中から、現場ですぐに導入でき、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選してご紹介していきます。

なぜ高級ブランドや百貨店は、「値下げ」をせずに「豪華なノベルティ」を付けるのか?Photo: Adobe Stock

「1万円引き」より「1万円相当のプレゼント」が
選ばれる理由

 新作のバッグや化粧品を検討しているとき、「今なら20%OFF」と言われるよりも、「今ならこのブランド特製の限定ポーチ(非売品)を差し上げます」と言われたほうが、心がときめきませんか?

 お客様が感じる「お得感」は同等、あるいはノベルティの方が上でありながら、店側のコストは定価の20%割引より大幅に抑えられます。これがノベルティ戦略の最大の強みです。

 あるいは割引の方が現金の流出は抑えられるはずなのに、人はなぜか「おまけ」が付くほうに強い魅力を感じてしまいます。

 実は、この「非売品・ノベルティ」戦略は、一度下げると戻せない「価格の基準」を守りながら、お客様の「得をしたい」という欲求を最大限に満たすための、非常に賢明な販促戦略なのです。

価格の基準値を維持する(参照価格の保護)

 一度でも「値下げ」を行ってしまうと、お客様の頭の中にあるその商品の「価値の基準(参照価格)」が下がってしまいます。

 次に定価で売ろうとしたときに「今は高い」と、感じさせてしまうリスクがあるのです。

 しかし、価格を維持したままノベルティを付ける手法なら、商品の「参照価格」は高いまま維持されます。

 ブランドの格を落とすことなく、「定価で買う正当な理由」を提供することで、価格競争に巻き込まれずに成約を勝ち取ることができるのです。

「おまけ」は別の財布から(メンタル・アカウンティング)

 もう一つの理由は、現金の割引よりも「モノ」としての還元の方が、脳が「得」を強く認識しやすいからです。これは心理学における「メンタル・アカウンティング(心の会計)」の応用です。

 現金の値引きは「家計費の節約」という損失補填として処理されますが、ノベルティは「臨時収入・贈り物」という別口座に入ります(メンタル・アカウンティング)。

 損失の補填よりも予期せぬ利得の方が感情的インパクトが大きいため、同額でもノベルティの方が「得した」という満足感が強くなるのです。

他のお店でも使える「付加価値による還元」設計

「現金を引かない」還元手法は、あらゆるサービス業で有効です。

 ・美容室:カット代を安くする代わりに、「自宅で使えるプロ仕様のミニシャンプー」をプレゼントし、再来店時の満足度へ繋げる
 ・自動車ディーラー:本体価格の値引き交渉に対し、「3年間の無料メンテナンスパック」を付与し、将来の安心感という価値で納得させる
 ・飲食店:コース料理を安売りせず、「次回使えるワンドリンク無料券」や「自家製ドレッシング」を渡し、リピートのきっかけを物理的に作る

まとめ

 値下げの代わりにノベルティを付けるのは、

 ・参照価格を維持し、ブランドの資産価値を長期間守る
 ・「メンタル・アカウンティング」を利用し、現金の節約以上の「情緒的な得」を与える
 ・「今しか手に入らない非売品」という希少性で決断を促す

 という、お客様の「満足」とお店の「利益(格)」を両立させるための、非常にバランスの取れた販促戦略なのです。

岡本達彦(おかもと・たつひこ)
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。