日本の株式市場では、長年にわたり主にエレクトロニクス関連の銘柄を「ハイテク株」と俗称している。筆者が初めてファンドを運用した1986年当時の記憶をたどると、80年代の前半に日立製作所やソニーなどが代表銘柄として人気を集めた「ハイテク株相場」があり、この頃から言われ始めたようだ。プロ・アマを問わず、「ハイテク株」「内需株」という言い方に懐かしさを覚える投資家は多いのではないか。
80年代後半はバブルのただ中で平均株価は高騰を続けたが、ハイテク株は、すでに人気で株価が高かったことに加えて、為替レートが円高に向かったこともあり、相対的に冴えなかった。
しかし当時、機関投資家のファンドマネジャーの多くは、80年代前半の相場が忘れられず、ハイテク株を市場の業種構成ウエートよりも大幅にオーバーウエートしていた。エレクトロニクスこそ成長分野だという刷り込みと、ハイテク株がグループとして動くときの株価上昇の大きさがイメージにあって、次のハイテク相場に乗り遅れるとライバルから大きく取り残される可能性があるという恐怖が理由のようだった。
だが、新人ファンドマネジャーだった筆者は、(1)ハイテクといっても製品のコモディティ(誰でも作れる普通の商品の意)化は急速に進んでいる、(2)似た企業が多く競争的で儲かりにくい、(3)円高に向かう公算が大きく輸出依存度の大きなハイテク株は不利だ、(4)周囲の運用者を見てわかるとおり、すでに過剰な人気を集めており株価は人気でかさ上げされている、と考えて、ハイテク株の比率を市場平均並みに抑えた。ライバルに対しては大幅なアンダーウエートで勝負したわけだが、幸い正解だった。
コモディティ化している、儲かりにくい、といっても、業種や企業の盛衰は一直線には進まない。結果から見ると、ハイテク企業は筆者の予想よりも長持ちしている。