農協改革案は第一に、農協の政治活動の中心だった全中(全国農業協同組合中央会)に関する規定を農協法から削除するとした。表向きは、中央会が上から指導するのではなく、地域の農協が自主的に地域農業の発展に取り組むことができるようにするためだとしているが、これが全中の政治力を削ぐものであることは明らかだ。農協法では全中は系統農協などから賦課金を徴収することができることとされている。これで全中は78億円を集めている。農協法の後ろ盾がなくなれば、全中は強制的に賦課金を徴収することはできなくなる。もちろん、任意の金を農協などから集めて政治活動をすることは可能だが、十分な金は集められなくなるだろう。農協の政治活動にとっては大打撃である。

 第二に、全農(全国農業協同組合連合会)の株式会社化である。これは今年4月に出した小著『農協解体』の中で私が初めて提案したものである。これも、表向きは、グローバル市場における競争に参加するため、株式会社に転換するとしているとしているが、中身は、協同組合ではなくすということである。日本の農業には、農協によって作られた高コスト体質がある。養豚農家によると、国内の輸入とうもろこし価格はアメリカの2倍である。

 これは飼料だけではなく、肥料・農薬、農業機械についても同じである。全農を中心とした農協は、肥料で8割、農薬、農業機械で6割、飼料で5割のシェアをもつ巨大な企業体である。このように大きな企業体であるのに、協同組合という理由で、全農には独占禁止法が適用されてこなかったし、一般の法人が25.5%なのに19%という安い法人税、組合員への配当の非課税、固定資産税の免除、多額の補助金など、様々な優遇措置が認められてきた。

 本来、農協は農家が安く資材を購入するために作った組織だったのだが、独占禁止法が適用されないことで、農家に高い高資材価格を農家に押し付け、最終的には高い食料品価格を消費者に押し付けてきた。様々な優遇措置がなくなることによって、全農が、一般の企業と同じ条件で競争するようになれば、資材価格や食料品価格が低下することが期待できる。規制改革会議が提案している全農の株式会社化は、協同組合であることの特権の除去を狙ったものだ。

 第三は、信用(銀行)・共済(保険)事業について、地域農協を農林中金や共済連合会の代理店にしようというものである。代理店としての報酬は受けるので、現状から収入的には大きな変更はないが、形式的には、地域農協から信用・共済事業を分離することとなる。さらに、準組合員の利用を正組合員の半分以下に抑えることも打ち出した。

 この改革案は、農協の意向を無視できない自民党によって、ほとんどと言って良いほど、骨抜きにされた。しかし、もうひと波乱起こるかもしれない。今年の秋、米価暴落が待ち受けているからである。