「2ヵ国語」と「選抜主義」が特徴
シンガポールの徹底したエリート教育
シンガポールは人材国家と言われる。1965年のマレーシアからの独立以降、資源を持たない小国でありながら急速な経済発展を遂げ、1人当たりGDPでは日本を超す豊かな国となったシンガポールの成功の鍵の1つは、人材政策にある。
歴史や政治体制、地政学的環境は異なるが、同様に天然資源に恵まれず少子高齢化問題を抱える日本が、人材の活用について考える際に、シンガポールの戦略性を持った考え方は参考となるだろう。
シンガポールの人材政策の要は、徹底したエリート教育と高度人材の受け入れにある。
エリート主義の徹底は、小国としての存亡をかけて効率よく経済発展を行う必要があるという現実的要請と、建国の父であるリークアンユー初代首相の信条によるところが大きかった。
リーは、結果の不平等を解決するためには、最も有能な人をパブリックサービスに就かせるべきだ、という思想に基づき国家建設にあたった。
シンガポールの教育の特徴は、2ヵ国語教育と選抜主義的教育である。小学と中学の課程では、第一言語として英語を、第二言語として母国語(中国語、マレー語、タミル語など)を学習しなければならない。第二言語で学ぶのは、道徳や文学、歴史などの一部である。
シンガポール教育省は、この2ヵ国語政策を「シンガポールの教育政策の礎石」であるとし、英語能力は子どもたちをグローバル化した世界に組みこむため、そして母国語能力は自らのルーツを保持し、中国やインドの台頭や、そしてASEANの統合の時代において競争力を持つことを可能にするため、と明確に意義付けている。