衆議院の任期満了まで4ヵ月あまり。「選挙で勝つことが天命」だと宣言して自民党総裁に就いた麻生総理大臣と、政権交代に政治生命を賭ける民主党・小沢代表。「決戦は、はたしていつなのか?」――政局をめぐる関心は、この1点に絞られていた。

 それを知るためにわれわれは、与野党の国会対策委員長、中でも、自民党の大島理森氏と民主党の山岡賢次氏の2人に密着取材することにした。国会対策委員長=「国対」は、法案審議の進め方に全責任を負い、他党との調整や交渉の最前線に立つ、「国会運営の司令塔」。解散のタイミングを計る麻生首相にとって、国会審議がスムーズに進むか=国対の働きが、その判断を左右する。

「政局より政策」の麻生首相
「補正予算案の審議」が解散のカギに

 国対はいま、何をめぐって戦っているのか。われわれが取材に入ったのは、平成21年度予算(本予算)の審議が大詰めを迎えていた3月半ば。静かな状況の国会では、淡々と審議が進んでいた。自民党の大島は、「政局より政策」を掲げる麻生首相のもと、政策の実績をあげることが、解散の環境づくりになると考えていた。そして大島が、解散の1つのタイミングになると見ていたのが、麻生首相が打ち出した経済対策が一通り完成する、本予算の年度内成立だった。 

 しかし麻生首相は、追加の経済対策が必要だとして、新たな補正予算を編成し、成立を目指す意向を表明。再び重い課題を背負った大島は、「首相が決断されたのなら、成果を挙げるべく全力を尽くすしかない」と語った。本予算の年度内成立という仕事を成し遂げたばかりの大島だったが、そこに笑顔はなかった。

 一方、本予算の審議では与党ペースを許した民主党の山岡。過去20年にわたり政治行動を小沢一郎と常にともにし、いまも頻繁に連絡を取り合っている。西松建設問題や、解散に踏み切らない麻生自民党を前に、どう反転攻勢に出るのか。民主党の国会対応に他の野党から批判も出る中、山岡は語った。

 「動かざること山の如しという時は終わった。これからは政権交代へ全力投球する」

 山岡が戦略を練るうえで欠かせないのが、肌身離さず持ち歩く黒い手帳だ。想定される国会審議の山場から、日程を逆算しながら、政府・与党を追い込むための計画を書き込む。

 4月、“麻生経済対策”の問題点を徹底的に調べ上げるチームの立ち上げを決めた山岡は、自ら菅代表代行、鳩山幹事長ら党幹部を回り、協力を取り付けた。いつ解散・総選挙が行なわれるのか。そのカギは、「補正予算案の審議」が握ることになった。

次の選挙の顔をめぐり、
両党内でさまざまな思惑も・・・

 一方、次期衆院選に向けて、自民・民主両党が抱える不確定要素が、「次の選挙の顔は、麻生VS小沢なのか」である。