しかも、いったん委託先を決めると、簡単には変えられない。委託先を変えると、前任の信託銀が取っていた株主属性のデータが通常、見られなくなる上、「どうして変えたのか」と株主から問い合わせが相次ぐため、発行会社に覚悟が必要なのだ。当然、「信託銀にもそうとうなディスカウントが求められる」(信託銀関係者)。

 となれば、価格競争は避けられない。「日本郵政を取るのは“名誉”。どこも、ほとんど利幅がないレベルで提案するだろうから、むしろ手数料の勝負にはならない」(信託銀幹部)というくらいだ。

 証券代行は、それ自体が差別化しにくい業務なだけに、勝敗は「ゆうパックに顧客を紹介したり、ゆうちょに人を送り込むなど、付帯サービスで決まるのでは」と前出の幹部は予想する。

大手2社の命運を握る

「不毛な競争がなくなるかもしれませんよ」(信託銀関係者)。日本郵政上場に伴うこのコンペは、特に信託トップ2社にとってははたから見る以上に大きな意味を持つ。

 トップ2社の管理株主数は肉薄している。三菱UFJ信託が2287万人であるのに対し、三井住友信託は2134万人(単体、今年3月末)。仮に三菱UFJ信託が勝てば“安全水準”まで三井住友信託との差を開けられるし、三井住友信託が勝てば同社は三菱UFJ信託の背中が見えてくる。

「めったにない大型案件」(証券会社関係者)である日本郵政のコンペは、今後の証券代行における勢力図まで決定付けかねない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)